プロも誤解している? クルマ「磨き」で大切なこと…石原ケミカルに聞く | CAR CARE PLUS

プロも誤解している? クルマ「磨き」で大切なこと…石原ケミカルに聞く

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プロも誤解している? クルマ「磨き」で大切なこと…石原ケミカルに聞く
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クルマの長期保有化が進む今、美観維持やボディ保護を目的としたコーティングへの注目度は高い。

このような背景から、ディテイリングショップはもちろん、ディーラー、ガソリンスタンド、さらに整備・鈑金塗装工場でもコーティングメニューを用意するケースが増えているが、品質を左右するのはコーティング前に行う下地処理の磨き(ポリッシング)だと言われている。

磨きは、コンパウンド(研磨剤)でクルマの塗装面に微細なキズをつけ、そのキズをより細かくして平らにする作業を指し、凹凸をなだらかにすることでキズが目立たなくなる。

磨き作業には、ポリッシャー、パッド、バフ、コンパウンドといった研磨ツールが必須。複数メーカーから数多くの関連製品が販売されており、基本セットはすぐに揃えられるが、特に重要なのは研磨ツールの組み合わせと言われている。もちろん研磨技術の習得も必要であり、独学で試行錯誤している一人親方の事業者は少なくないようだ。

そこで、研磨ツールをはじめ自動車アフターマーケット向けに数多くの製品を開発・製造販売する化学薬品メーカーである、石原ケミカル株式会社の常務取締役 営業本部長 越山剛氏と、営業本部 第一営業部 次席 船附博志氏に、クルマの磨きや研磨ツールについて話を聞いた。

日本で初めて「液体カーワックス」を展開

石原ケミカルは、電子部品用めっき液で国内トップシェアを誇る老舗で、自動車用ケミカル品や工業薬品の研究開発・製品販売も行っている。

営業本部長の越山氏は「楽器・家具用のつや出し剤を1953(昭和28)年に開発し、自社ブランド “ ユニコン ” を立ち上げました。その後、国産初の液体カーワックスを製造販売し、自動車用品分野に参入しました」と話す。現在は、自動車メーカーやカーディーラーを中心に自社開発のエアコンクリーナーが好評で、供給先が拡大。また、洗車機用洗剤や潤滑油、コンパウンド・バフ、補修用塗料、防錆剤といったプロユースを中心に幅広いニーズに応える製品の研究開発・製造販売に注力している。

コーティングの品質は、ピンからキリまで

石原ケミカルでは、鈑金塗装工場での磨きを想定した、研磨・仕上げ用の独自コンパウンドシステムやそれらに付随する各種バフ類などを提供。塗料販売店などを通じて自社製品を導入した事業者が、理想的な仕上がりにならず、失敗して悩んでいる場合などは、施工講習や説明会を行っているケースもあるという

全国の鈑金塗装工場やディテイリングショップなどの施工店を対象に、長年にわたって技術指導を行う、営業本部 第一営業部 次席の船附氏は「鈑金塗装の補修と、ディテイリングの磨きはまったく違うもの。と認識されている方も中にはいらっしゃいますが、基本的には同じです」と話す。

また、コーティングの品質はピンからキリまであることに言及。軽自動車でぱっと見で光沢感があり1~2年ほどキレイなら良いというレベルから、高級輸入車をより艷やかに5~10年美しく保持したいのとでは、当然作業内容が変わり、施工費用も2万~100万円以上と大きな幅がある。それを踏まえた上で、船附氏は下地処理の重要性に触れ「紫外線で劣化したボディの下地を整えないままコーティングしてもあまり意味がない」と告げた。

問題追求が技術向上につながる

研磨ツールの選定や組み合わせ方について、誤解している施工店が多いことも指摘。ダブルアクションポリッシャーで磨かないとダメ、あとでトラブルが起きる。と言い、考えを改めない施工者もいるらしい。特定の道具にこだわって時間をかけて磨き上げる方法も確かにあるが、それでは作業効率が悪く研磨技術の向上も難しい。大事なのは、求める品質に対して、施工車両の塗料や状態をみて、劣化したボディ塗膜をどこまで磨く(剥ぎ取る)のか。剥がしたい厚みを決めて研磨ツールを選定する点にあるという。

「仕上げたいレベルに合わせて、シングル、ギア、ダブルとポリッシャーを使い分ければ作業時間は短縮できます。コンパウンドとバフの相性によって切れが変わり、バフ表面のウールの太さ、先端の状態でも切れは変わります。最適なツールを選定して組み合わせ、磨き作業の中で作業の仕方を変えられるか、どうかも重要です。ツール選定の基本を知り、塗面の状態を把握して求める品質になるように応用ができてこそ。磨きで失敗したら研磨ツールを変えるのもひとつですが、失敗の原因を理解することが大切です。当社の施工講習では “ こうしなさい ” ではなく、失敗したときの研磨ツールや磨き方をヒアリングし、何が良くなかったのかその理由を説明し、問題解決にベストな磨き方をレクチャーしています。施工者ご自身での問題追求が技術向上につながっていきますから」と船附氏は考えを述べる。

“不純物を含んでいない”コンパウンド

石原ケミカルのコンパウンドシステム(FMC 8000-LS、FMC マイスター、FMC NEO)の特徴を尋ねたら「つや出し性能がある “ 不純物を含んでいない ” ところです」と船附氏は言い切る。研磨粒子のみで切るため、作業時に粉が多い点はデメリットだが、磨き後は水拭きだけで安心とのこと。

どういった意味で “ 安心 ” なのか聞くと、船附氏はこう続けた。

市場には、水性光沢剤や塗装面を柔らかくする物質などが含まれたコンパウンドがあり、作業時の粉が少なく、良く滑ってつやが出やすい点などがメリットです。添加物がキズを隠す(埋める)ため、早く切れる感覚もえられます。最近の水性光沢剤成分などは性能が高く、脱脂剤で拭き上げても落ちませんが、実は熱に弱い。例えば夏場の午前中に磨いて、数時間後にバフ目(削り跡)がフワッと浮き出たり、冬場だったら二日後に浮き出る場合もあります。施工店では美しい仕上がりだったのに、納車時にはバフ目が浮き出てクレームで戻ってくるケースがあり、そういった意味で安心とはいえません。添加物が含まれたコンパウンドでも問題ないものもありますが、当社では不純物を含まない製品づくりにこだわっており、磨き後の悪影響を心配する必要はありません」と話す。なお、磨き作業時の粉末の飛び散りを低減し、コーティング前の下地処理に最適なものとして新開発した製品(FMC PRO-Z)も提供しているという。

研磨ツールの選定や組み合わせは、熟練のプロでも試行錯誤するもので、クルマ磨きは実に奥深い。プロとして磨きやコーティング施工に携わる事業者は、磨きの基本を理解できているか振り返ることで、施工品質や作業効率向上のヒントが見つかるかもしれない。塗装も進化しているなかで、塗装面へのサービスの施工も独学ではなく、情報収集やスキルアップも重要だ。

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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