スバル インプレッサが駆け抜けた30年、初代から新型までの歴史を振り返る | CAR CARE PLUS

スバル インプレッサが駆け抜けた30年、初代から新型までの歴史を振り返る

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スバル インプレッサ(初代~4代目)
スバル インプレッサ(初代~4代目) 全 40 枚 拡大写真

2022年10月、スバルの三本柱の1つ、『インプレッサ』は誕生から30年の節目を迎えた。発表されたのは1992年(平成4年)10月。11月に販売開始となった。

それから30年後の22年11月、アメリカ・ロサンゼルスモーターショー2022の会場で、スバル・オブ・アメリカは6代目インプレッサの北米仕様を発表した。ボディタイプは5ドアモデルだけで、フォルムは先行して発表された『XV』の後継車、『クロストレック』に限りなく近い。

◆初代:高性能4WDが売り、「新世代のドライバーズ・ベーシック」(1992年~)

インプレッサが誕生したときには富士重工業を名乗っていたスバルは、航空機の分野で高い技術力を誇った中島飛行機を母体に誕生した会社だ。1958年(昭和33年)春に軽乗用車のスバル『360』を発売し、第一次軽自動車ブームをけん引した。これに続く小型ファミリーカーが66年5月に送り出したスバル『1000』である。いち早く前輪駆動のFF方式を採用し、パワートレインは重心が低くコンパクトな水平対向4気筒だ。サスペンションは4輪独立懸架で、軽快な走りを実現した。

このスバル1000の設計思想とスピリットは70年代に『レオーネ』に、そして90年代にはインプレッサへと引き継がれていく。トヨタ『カローラ』や日産『サニー』と真っ向勝負でき、その上のクラスとも互角に渡り合える新感覚のファミリーカーがインプレッサだった。キャッチフレーズは「新世代のドライバーズ・ベーシック」だ。『レガシィ』から滑らかな水平対向4気筒エンジンと先進的な4WDシステムを譲り受け、これを主役の座につけている。

デビュー時のボディタイプは4ドアのハードトップセダンと5ドアのスポーツワゴンだ。駆動方式はFFとそれをベースにしたフルタイム4WDを設定した。水平対向4気筒エンジンのリーダーは、WRXに搭載された2.0リットルのEJ20型DOHCインタークーラー付きターボである。4WDシステムは、5速MT車がビスカスLSDを組み込んだセンターデフ式4WD、4速AT車はセンターデフに電子制御式の油圧多板クラッチをLSDとして用いたVTD式4WDだ。

スポーツ4WDのインプレッサWRXは好調に販売を伸ばし、これをベースにしたラリーカーも93年8月にWRC(世界ラリー選手権)デビューを果たした。94年にタイトル争いに加わり、95年からは3年連続してチャンピオンに輝いている。WRCでの躍進が後押しした形となり、インプレッサは高性能4WDモデルとして認知されるようになった。

94年1月、スバルのモータースポーツ部門を司っているスバルテクニカインターナショナル(STI)は、WRXのB型をファインチューニングし、走りの実力を高めた特別限定車を投入する。それがSTI(当時の表記はSTi)バージョンだ。EJ20型DOHCターボエンジンをパワーアップし、足もハードに締め上げた。96年に投入したSTiバージョン3からはライン生産になり、新たなスタートを切っている。また、引き続き、限定発売のコンプリートカーも不定期で送り出した。

◆2代目:全幅が広がった「ニューエイジ・インプイレッサ」(2000年~)

2000年8月、28万台に迫る生産を記録したインプレッサは初めてのモデルチェンジを断行した。新環状力骨構造の衝突安全ボディを採用した2代目の「ニューエイジ・インプレッサ」の登場だ。4ドアをスポーティセダンと位置づけ、ブリスターフェンダーによって全幅を広げて3ナンバー車としている。パワーユニットは2.0リットルのEJ20型水平対向4気筒で、自然吸気とDOHCターボを設定した。5ドアのスポーツワゴンは5ナンバー車で、価格を抑えた1.5リットルモデルもある。

第2世代のWRX STiが登場するのは10月だ。ツインスクロールターボを採用し、トランスミッションも新設計の6速MTに進化した。2代目は基準車を含め、走りのポテンシャルを大きく引き上げている。だが、丸目ヘッドライトのフロントマスクが不評だったため、2度にわたってフロントマスクを化粧直しした。2005年6月に「スプレッドウイングスグリル」を採用したのを機に、STiは表記を大文字のSTIに変えている。

STIのコンプリートカーは「S202」、「S203」、そしてパフォーマンスダンパー装着の「S204」まで発展させた。いずれも発表直後に完売となり、今も中古車市場では高値で取り引きされている。2代目インプレッサは、メカニズムからデザインまで大きく進化させた。操って楽しかったし安全性も高いレベルにあったから、18万台を超える生産を記録し、海外でもファンを増やしている。

◆3代目:ワイドボディをまとい、新たなファンを獲得(2007年~)

ブランドの知名度を飛躍的に高めることに成功したインプレッサは、2007年6月にワイドボディをまとった5ドアの第3世代が登場した。3代目はレガシィのプラットフォームに手を加えたSIシャシーを採用し、リアサスペンションは設計自由度の高いダブルウイッシュボーンだ。また、サッシュレスドアをやめ、剛性面で有利なサッシュドアに変えている。2008年10月には4ドアセダンのアネシスを仲間に加え、選択肢を増やした。

エンジンはEJ系の水平対向4気筒で、1.5リットルと2リットルを設定する。トランスミッションは5速MTと4速ATだ。フラッグシップはDOHCターボに4WDの2.0GTだったが、10月にWRX STIを送り出した。5ドアモデルだけに絞り込み、フェンダーを膨らませてワイドタイヤを履けるようにしている。ツインスクロールターボ装着のEJ20型DOHCにも改良を施し、パワーアップした。意のままの走りを実現するためにDCCSとVDCをマルチモード化し、SIドライブも採用するなど、メカニズムの革新も進んだ。

2010年6月、SUVテイストを加味したインプレッサXVを送り出し、7月にはインプレッサ全車がフェイスリフトを行っている。このときに4ドアセダンのWRX STIを投入した。また、2.5リットルのEJ25型DOHCターボを積み、5速ATを組み合わせたAラインも加わる。新シャシーの採用によって足の動きもよくなったWRX STIは路面に関わらず群を抜く高いスタビリティ能力を見せつけた。エンジンもパワフルだ。3代目インプレッサは世界100カ国以上に輸出され、新たなファン層の獲得に成功している。

◆4代目:「ニューバリュークラス」をコンセプトとし、本質に立ち返る(2011年~)

これに続く4代目は、クルマを取り巻く環境が大きく変わった2011年12月に産声をあげた。商品コンセプトは「ニューバリュークラス」だ。インプレッサの本質に立ち返るとともに、新しい価値をユーザーに提供するクルマを目指した。パッケージとデザインを大きく変え、5ドアモデルは「スポーツ」、4ドアセダンは「G4」を名乗っている。クロスオーバー4WDのXVは独立し、別ブランドとして新たなスタートを切った。スポーツ4WDのWRX STIも14年に独立する。

メカニズムでは新世代ボクサーエンジンを開発したことが注目点だ。自然吸気エンジンだけの設定で、ターボ車はない。無段変速機のリニアトロニックを新たに採用したのもニュースの1つだ。先進的な運転支援システムのアイサイトを設定するなど、安全性能も大きく向上させている。15年にはマイルドハイブリッド車を追加して環境対策にも意欲を見せた。

◆5代目:全方位にわたって改良、安全性も向上(2016年~)

16年秋に登場した第5世代は、新世代のスバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)を採用して走りの質感を高めるとともに、運転支援システムのアイサイトも最新版のバージョン3に進化させている。また、日本車で初めて歩行者保護エアバッグを標準装備したことにも注目だ。エンジンは1.6リットルと2.0リットルの水平対向4気筒DOHCで、トランスミッションは7速CVT(リニアトロニック)を組み合わせ、さらに燃費を向上させた。

インプレッサは精力的に年次改良を行い、20年10月には電動技術を盛り込んだ「e-BOXER」搭載車を5ドアの「スポーツ」に設定。また、FF車に「STIスポーツ」を追加している。エンジンは2.0リットルの水平対向直噴4気筒DOHCのFB20型だが、エクステリアを専用デザインとし、フロントサスペンションにはSHOWA製の周波数応答式減衰力可変ダンパーを装着する。

◆ベールを脱いだ6代目、日本仕様の正式発表は?

5代目インプレッサは22年12月をもって生産を終えた。それに先立つ11月のロサンゼルスモーターショー2022で6代目インプレッサの北米仕様がベールを脱いでいる。内外装はクロストレックに準じたデザインだ。注目の心臓は、2.0リットルと2.5リットルの水平対向4気筒DOHCがあると発表された。日本仕様は2.0リットルのFB型筒内直接噴射エンジンにモーターを組み合わせたパラレル式ハイブリッドの「e-BOXER」が主役になるだろう。

新設計のサスペンションや2ピニオン電動パワーステアリングの採用により、ハンドリングの洗練度はかなり高いはずだ。第6世代のインプレッサは、スバルのエンジニアが情熱を傾けて開発した意欲作である。その正式発表は23年半ばか!? 楽しみに待ちたい。

《片岡英明》

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