サーラコーポレーションの連結子会社のサーラカーズジャパンは、同社が運営するアウディ浜松において、実質的にCO2排出量ゼロの電気・ガスを使用する店舗の運用を開始。一部報道陣に店舗を公開した。
◆自分たちで使う電気は自分たちで作る
アウディ浜松は2018年にオープンした比較的新しいショールームだ。この屋上は駐車場などの使用もなかったことから約400枚のソーラーパネルを敷き詰めることができ、年間17万3000kwの発電が可能となった。そのうち自家消費は7万1000kwで、余剰分は売却している。つまり、エネルギーの地産地消を考え、自分たちで使うエネルギーは自分たちで作ることが目指されたのだ。
これはサーラコーポレーション全体の考え方でもあり、同社はエネルギーを主体とした経営を主に行っている。その運営方針としてカーボンニュートラルを目指すことが掲げられていたことも、今回の取り組みに繋がった。
同時にグループ会社のサーラエネルギーの存在も大きい。今回の設備設置や施工等々は全てサーラエネルギーの“ゼロソーラーサービス”プログラムを使用することで、初期投資なくこの仕組みが実現できたのだ。具体的には、ソーラーパネルの接地施工、メンテナンス等は全てサーラエネルギーが行う20年契約となっている。
まずアウディ浜松で発電した電気はサーラエネルギーに行き、そこからアウディ浜松が購入する仕組みだ。また、余剰電力の売電はサーラエネルギーが行うことで、同社の利益を確保している。従って、アウディ浜松ではこれまで通り電気を使い、その電気料金を支払うだけなのだ。
では、電気料金は高くなるのではないか。その点についてサーラカーズジャパン代表取締役社長の坂爪謙治氏は、「計画当初は多少電気代が高くなるかもという思いでスタートしたが、商業用の電気代が非常に上がっていることから、いまは通常の電気を使うよりも15%から20%安くなっている」とコメント。
もうひとつ地域性も大きく関与している。浜松は日照時間日本トップクラス(浜松市カーボンニュートラル推進事業本部本部長の村上隆康氏のコメント)であることも重要なポイントだ。
また、同ディーラーの空調システムは都市ガスを使用しているが、これもカーボンニュートラルのものを導入し、また、夜間や天候が悪く発電できない場合も同じグループのサーラeエナジーよりカーボンニュートラルの電気を購入しているという。
これらの結果としてco2削減は年間115トンに達するという。
◆年央までには他店舗も
アウディ浜松がなぜこの取り組みを推進したのか。橋爪氏は大きく2つあるという。ひとつは、「単にカーボンニュートラルの電気を買ってきて、カーボンニュートラルができたから終わりではなく、我々自身が使う電力は我々自身で作りたいという思いがあった」。もうひとつは、「その電気を使ってお客様のクルマをアウディ浜松で充電する。全部CO2フリーだ。そういう電気を提供したかった。およそ1000台は対応可能」とのことだった。
またサーラカーズは他にもいくつかの店舗を持っている。その中でもフォルクスワーゲン浜松と、フォルクスワーゲンとアウディの第2工場は年央までにカーボンニュートラルを実現する予定である。
◆まずは急速充電網拡大
このようなディーラー独自の取り組みについてアウディジャパン ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏は高く評価。同時にアウディジャパンとしては、「まずは急速充電ネットワークの構築に力を入れていく。150kwのスーパーチャージャーを導入し、プレミアムチャージングアライアンス(アウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェの全てのディーラーで、これらメーカーのお客様がチャージできる環境を整える)が去年年末出来上がり、今年も拡張していく」と直近の取り組みを説明。まずは急速充電の普及を第1のステップとし、それが出来上がった段階で、「ショールームのカーボンニュートラル化を目指していきたい」とした。
この急速充電設置は1000万円から1500万円ほどになるという。シェーパース氏は、「こういったものに対して何か補助金を出してるわけではなく、ディーラーのビジョンに基づいて出来上がっている。そこでまずは我々のビジョンや考え方を示しながら、こういった道に行くしかない、これをアウティブランドのお客さんが望んでいると考えられるように持っていくのが私の仕事。巨額な資金で、投資をサポートすることはいまのところ考えていない」とし、「いずれ、ネットワーク全体をカーボンニュートラル化していくのは我々がやらなければいけないこと。ただ、それは少し先の話だろう」とコメントした。
サーラコーポレーションは静岡県の浜松から愛知県の豊橋など東海地区を中心に事業を行っている。その中には豊橋市にあるホテルアークリッシュ豊橋も含まれている。ここにある“RESTAURANT KEI”は、地元の食材をふんだんに使った料理を提供している。つまり、エネルギーも食材も“地産地消”。それがサーラコーポレーションの理念のひとつといえ、またカーボンニュートラルへの取り組みのキーのひとつなのかもしれない。