まもなく訪れるお盆期間のほか、年末年始など帰省シーズンになるとメディアなどでも目にすることが増える「渋滞予報士」という人たち。いったい、どういう存在で、渋滞をどのように予測しているか、渋滞緩和へどのように取り組んでいるのかを直接、聞いてみた。
◆そもそも「渋滞予報士」とは?
渋滞予報士は、NEXCO東日本で主に渋滞関連の業務に携わるスタッフをそう呼んでいる。特別な資格などではないという。
NEXCO東日本の前進となる日本道路公団は1987年に渋滞予測の情報提供を一般向けに開始し、この活動をより広く知ってもらおうということから民営化後の2007年にNEXCO東日本が渋滞予報士の取り組みをスタート。当初は最も渋滞が多く発生する関東支社にのみだったが。2017年から北海道、東北、新潟の各支社にも置いた。
なお、NEXCO中日本では、「高速道路ドライブアドバイザー」、NEXCO西日本では「渋滞予測士」と名称こそ異なるが同じような業務内容を行なっているスタッフが存在する。
◆予報は365日、24時間、過去のよく似たデータを重ね合わせ行う
お盆や年末年始などだけでなく、渋滞の予報は365日、24時間を対象に行われている。
その手法はというと、過去三年のデータをもとに、渋滞の開始の時刻、ピーク時刻、解消時刻とその渋滞長を三角形のグラフのようなデータにして重ね合わせて行うという。
気象の予報の場合は基準となる30年間のデータを使うが、渋滞予報の場合は、直近3年や決まった基準の年が設定されているのではない部分が大きく異なる点だ。
渋滞の予報には曜日や天候、道路の新設などの状況、高速道路の割引サービスや料金体系の変化、周辺での大規模イベントなど、さまざまな要素が絡み合う。そのため、予測する期間により近い年のデータをその都度選択して行うのである。
例えば、今年のお盆の混雑予測は、今年同じように山の日が金曜日で3連休になったカレンダーの2017年と、コロナ禍前で同等の交通量になると思われる2019年、道路の新設などネットワーク状況が今年に最も近い、昨年(2022)年の3年を基準にして行なったという。
◆予測だけでなく、渋滞緩和への対策を企画も
関東支社の渋滞予報士・田中優太さんによると、渋滞を予測し、記者発表などを行うのはもちろんのこと、混雑緩和のためにどうすれば良いか、対策を企画するのも予報士の重要な仕事だという。
予報士が企画・検討に携わった対策の例としては、東京湾アクアラインのトンネルに設置されている「ペースメーカーライト」がその1つだ。
交通集中渋滞(自然渋滞)は勾配の変化(特に上り坂)で速度が低下することによって引き起こされることが多い。そこで、トンネル内で色付きのライトを点灯させ、進行方向に向かって流れていくように見せることで、運転手が光に追いつこうという心理を利用して、速度を回復させるのがペースメーカーライト。現場環境に応じてペースメーカーライトではなく、標識で知らせている。
また、渋滞情報と合わせて、前述のような渋滞のメカニズムを利用者に広報し、渋滞の緩和を促すことも、渋滞予報士の大きな仕事のひとつとなっている。