「ボディは力だ」とは昔の日産のCMキャッチコピー。それほどクルマの性能にボディ剛性は関わってくる。手軽に取り付けられる補強パーツでも意外とビックリするほどの効果を発揮できる。
◆ボディ剛性とハンドリングの関係
ボディは鉄板を重ねて溶接されてできている。このボディが強ければいいのだが、弱いとさまざまな不具合が起きる。例えば、ステアリングを切ったときにクルマがスッと曲がらず、ボディがぐわんと大きく揺れてそれから曲がったりする。
これは明確にはわからないが実はドライバーはなんとなくその動きを感じているもので、ステアリングを切ったり戻したりしたくなるクルマはボディ剛性が足りなかったりする。もちろんもともとステアリングを切ったり戻したりするクセがある人ではなく、ある程度素直に運転できる人の場合ではあるが。
ステアリングを切る=タイヤが向きを変えてボディがひねられる=ボディが変形して戻ろうとする=それによってクルマの動きが不安定になりステアリングを戻そうという動きになる。という一連の動きが起きてしまう。
◆ボディが弱いと疲れやすいことも
それがガッチリしたクルマの場合はステアリングを切ってもボディの変形がごくわずかなので、車体の不安定感をドライバーが感じない。切ったぶんだけ曲がる、と感じられドライバーはストレスなく運転ができる。
ボディ剛性が低いととんでもないことが起きるわけでは無いが、ドライバーは自然と気を使って運転し、その挙動に対応していて、徐々に疲労が溜まってくるのだ。
それは同乗者も同じでなんとなく不安定になるクルマに乗っているより、ガッチリした安定したクルマに乗っている方が疲れにくい。理想としてはリビングでソファーに座っているのと同じように、リラックスして乗っていられれば疲れにくいわけである。
◆ボディ剛性の向上には多くのジレンマが存在する
このボディ剛性を高めるというのは大変な話。自動車メーカーでは高張力鋼板を使ったり、鉄板同士を重ねて雷のように電気を流して、その内部を溶かしてくっつけるスポット溶接の箇所を増やして剛性を高めていく。
そこには膨大なコストが掛かり、自動車メーカーとしては少しでもコストは抑えたいが、ボディ剛性を高めると良いことがあるのはもちろんわかっている。そのせめぎあいのなかで剛性が決められていく。
さらに重量も重要。剛性が上がっても車重が重くなるほど燃費は悪化する。商品力として燃費は重要な要素なので、少しでも軽く仕上げたい。そういった数多くのジレンマの中でボディが設計されている。
なので「あのクルマはボディ剛性がイマイチ」なんて言われることもあるだろうが、自動車メーカー側でもコストや重量とのバランスをした結果そうなってしまっていると思われる。
ちなみに某メーカーの内部の人に、新型車はスポット溶接箇所が多く、徐々に様子を見ながら不要そうなスポット溶接箇所を減らしてコストダウンをしているから、モデル初期ほどボディ剛性が高いと言われているという件を聞いたところ、「そんなことしてスポット溶接のプログラム変えるほうが高い」ということで、どうも都市伝説らしい。
◆追加パーツで剛性アップ
そんなボディ剛性を高める簡単な方法が追加補強パーツだ。一般的なのはエンジンルームのサスペンション上部をつなぐタワーバーが代表的存在。
ネジをわずか6本緩めて締めるだけで取り付けられるが、ステアリングレスポンスが良くなりビックリするほど効果を発揮する。
高速道路での安心感が増えたり、ブレーキを踏んだときのステアリングの安心感が増えたりと意外と大きな効果を発揮する。
◆純正で補強されていることも
車種によっては純正でタワーバーが装着されることもあるくらいで、効果を発揮するのは間違いない。
S15シルビアではNA車には装着されていないが、ターボ車にはリアのトランク内に左右のサスペンションアッパーをつなぐタワーバーが追加されている。リア回りも効果を発揮することが自動車メーカーが装着していることからもわかる。
ほかにはDIY取り付けは厳しいが、足まわりのサスペンションアームの付け根を補強するパーツも効果的。アームには大きな力が加わり動きやすい。そこでその支点となる部分を強化することでアライメント変化を防いで、ハンドリングの安心感を上げることができる。
◆さすがに良いこと尽くめではない
こういったパーツはいずれも数万円で購入でき、効果も体感できるのでコストパフォーマンスの高いチューニングパーツなのだ。
気をつけたいのはつければつけるほど良くなるとも限らないこと。ガチガチにしていくとボディがある程度ひねられて向きを変える自然なハンドリングが失われていくことがある。
そのあたりどんなハンドリングを目指してどこを補強するか、ある程度目標などを定めてそれに合わせて装着してもらいたい。また、重量的にも重くなる方向なのでやり過ぎには注意が必要なのだ。