洗車したのに、黒や茶色の斑点がボンネットなどに残り、手で触れるとザラザラ感がある…。その原因はおそらく “ 鉄粉 ” だろう。輸入車のホイールが黒くなる「ブレーキダスト」も、ブレーキパッドやローターがすり減って飛び散った “ 鉄粉 ” が原因といわれている。ボディやホイールなどに突き刺さった鉄粉を放置するとサビて固着し、洗車スポンジなどで強く擦って落とそうとすると、除去どころか細かいキズをつけてしまう。
粘土クリーナーの元祖『トラップネンド』
そういった事態を回避する鉄粉除去の定番アイテムといえば、粘土クリーナーの元祖として、カーディテイリングや鈑金塗装のプロたちを中心に、世界中で愛用されているジョイボンド株式会社(古館忠夫代表)の『トラップネンド』だ。
ボディ塗装面の鉄粉や塗装ミスト除去用の研磨ネンドで、古館代表の発明品として1987年に特許を取得。研磨力があり通常使用される標準品(赤ネンド)と、研磨力が弱く小さな塗物の除去用タイプ(青ネンド)の2種類がある。
日本をはじめ世界各国で販売され、特許消失後もプロ御用達アイテムとして、カーディテイリングショップや鈑金塗装事業者が愛用している。35年以上前から世界中で活用されている功績が高く評価され、トラップネンド発明者の古館代表は2023年1月31日に、アメリカに本部を置く国際ディテイリング協会「International Detailing Association(IDA)」から、カーディテイリング業界に大きく貢献した専門家に贈られる『Hall of fame(殿堂入り)』に日本人で初めて選ばれた。この受賞は、日本生まれの研磨アイテムが世界のカーディテイリング業界で認められた証明といえる。
プロ向け『トラップネンド』を使ってみる
世界中で愛用されている『トラップネンド』は “ プロ用 ” だが、一般のカーオーナーも購入できる。当編集部で実際に使ってみて、作業手順や使用感、注意点などをお伝えしたい。
まずはじめに、放水できる自宅駐車場や洗車場などを作業場として確保する。次に、汚れが付着していないキレイな手でトラップネンドを取り出して練り合わせる。練っている最中や作業中に、砂利の地面などにトラップネンドを落として砂などがめり込んでしまうと、二度と使用できなくなるので要注意だ。
続いて、鉄粉除去を行いたいボディ塗装面に水をかける。水をかけることでトラップネンドと塗装面の摩擦抵抗を小さくし、作業がしやすくなる。
作業時の重要なポイントは、トラップネンドを塗装面に擦り付けるのではなく、水の上を滑らせてボディを撫でるように作業すること。日照りが強い夏場などは水が乾きやすいため、水をかけながら作業するのが望ましい。
トラップネンドでボディを撫でることで、鉄粉などの汚染物質を取り除いていく。トラップネンドを裏返すと、汚れが付着しているのが目で見てすぐにわかる。ボディに刺さった鉄粉などの汚染物質が粘土に包まれたとき、粘土に含まれる砥石の研磨剤が汚染物質を剥ぎ取るため、ボディは傷がつかない。その証拠に水垢も取れない。それがトラップネンドのメカニズムとなっている。作業後、ポリパックやポリ袋などに手を入れた状態で作業箇所のボディを撫でると、作業前に感じたザラザラ感が軽減されていることを実感しやすい。
トラップネンドが汚れてきたら、その部分を内側にめり込ませて丸め、汚れが見えない状態であれば、再使用できる。空気中に放置しておいても何度も使えるが、砂利やホコリがつかないように、ポリ袋などに入れて保管してほしい。廃棄する際は「産業廃棄物」に準ずるものとして、許可を受けた専門業者に廃棄を委託する必要がある。
今回、トラップネンドを実際に使用して注意点などを紹介したが、基本的には “ プロ用 ” となっている。カーディテイリング技術がない一般のカーオーナーでも使用可能だが、作業手順を間違えるとボディなどに細かいキズがつくなどトラブルが生じる場合も十分にある。またトラップネンドの類似品や模倣品が数多く出回っているため、購入にも注意が必要だ(ジョイボンドの公式サイトで正規品を販売中)。ボディ全体の本格的な鉄粉除去を行いたい場合は、作業時間と施工技術も必要になるため、カーディテイリングショップなどプロに依頼することをオススメする。
●協力:ジョイボンド株式会社 『トラップネンド』5個入 税抜7,500円