洗車を行い、愛車を「良い艶を持った車にする日」、洗車をすることで「愛車への愛着を高める日」として、一般社団法人自動車用品小売業協会(APARA)では、“良いツヤ”の語呂合わせで、11月28日を「イイ(11)ツヤ(28)」、4月28日を「ヨイ(4)ツヤ(28)」と呼び、『洗車の日』として制定している。
そこで今回は、11月の洗車の日を前に、洗車に関連する「ウインドウォッシャー」と「ボディを傷める虫(蟻酸)対策」について取り上げてみたい。
ウォッシャー液の重要な役割
昨今の自動車は先進安全装置が多く搭載され、特にフロント部分はカメラの装着が当たり前のようになってきている。そんなカメラの視界確保などの点で役割が増しているワイパーと共に、一見“変わっていない”ように見えても“進化している”のがウィンドウォッシャーである。
運転中、フロントガラスの汚れがひどい時に活躍するのが「ウォッシャー液」である。ウォッシャー液は、いわば“ガラス用の洗剤”のようなものだ。ウォッシャーノズルから噴出され、ガラスに付き、それをワイパーでこすることで汚れが落ちるというシンプルな仕組みだ。カーオーナーの皆様も1度は使ったことがあると思う。
また、ウォッシャー液が不足した状態でワイパーを動かすと、汚れが落ちないことに加え、 例えばフロントガラスに砂利などの大きな粒子が付いていると、ガラス面に傷が入ってしまう可能性もある。 その意味で、ウォッシャー液は視界の確保だけではなく、ガラスの保護にも一役買っているのだ。 なお、ウォッシャー液が上手く噴霧できないと、その車は車検を通すことができないということは基礎知識として知っておく必要がある。
ウォッシャー液の成分と注意点
ウォッシャー液の役割は、前述の通り、ガラスなどに付いた汚れを落とすことにある。そのため、成分には洗浄剤(界面活性剤など)が 含まれているが、他にも、凍結、ワイパーのビビリ音、油膜、泡立ち、 ウォッシャー液自体の腐り、ノズルの目詰まりなどを防止するためのアルコール類、防腐剤・防錆剤など様々な成分が含まれている。
なお、使い方はそのまま使える原液タイプと薄めて使う希釈タイプの2種類があり、原液タイプは、濃度が高く凍結温度がより低くなるので、寒冷地向けのタイプと言える。一方の薄めて使う希釈タイプは、 薄めて使うため、減りが少なくコスパに優れている点が特徴。現在のウォッシャー液として、主流のタイプである。ちなみにメーカーに確認したところ、希釈が原因でウォッシャー液の効き目がダウンするようなことは無いそうだ。
また、ウォッシャー液が無くなった際に、水道水で代用することはできるものの、汚れの落ちが悪くなり、水が凍る可能性も高まるほか、長期間タンクに入れておくと腐ってしまうリスクもある。さらにミネラルウォーターでは、ミネラル成分が車体の塗装にシミを作ったり、雑菌などがタンク内やパイプに繁殖してしまうため、避けるべきである。 また油膜や視界不良の原因になりかねないため、家庭向け食器用洗剤などをウォッシャー液に混ぜることは絶対にNGである。
霜取りに超純水… 進化するウインドウォッシャー
最近のウインドウォッシャーの進化についても少し触れておきたい。例えばトヨタ自動車では、約50度に温めたウォッシャー液を噴射可能とした「霜取りウォッシャー」を、2020年からカローラにディーラーオプションとして装備を開始している。
その仕組みは、エンジン始動中にウォッシャー液を本体内のユニットで約50℃まで加熱し、保温容器により温度低下を抑制するというもの。エンジン停止後12時間程度は効果を発揮するという。
なお、エンジン停止後から12時間以上経過した場合は、エンジンを始動し 加熱してからの使用となる。加熱時間は容器内温度によるそうだが、 最大15分(−10℃の場合)ほどだという。ポイントは、液体の加熱上限温度を約50℃とすることで、ウォッシャー液の不凍成分であるアルコールの揮発を防止するという点。ちなみに専用スイッチのオン/オフで加熱機能の停止は可能だが、雪や氷の除去には適さないとのことなので、注意も必要だ。
またウォッシャー液を噴射するノズルは、ボンネットに置かれること多いが、一部の車種では、ワイパー自体にノズルが設けられているものもある。通常では、噴射されたウォッシャー液はフロントウィンドウの全域に届かないが、この方法なら広範囲に液剤を届けることが可能だ。 国産車モデルでは、レクサスやクラウン、マツダ3などで採用例が増えている。
その他、水道水などに含まれる不純物を限りなく除去した“超純水”を主成分に使用し、後残りせず、シミを作らないタイプなども登場するなど、まだまだウインドウォッシャーには進化の余地が残されていると言えるのではないだろうか。
放置してはいけないフロントまわりの虫の死骸
生物が光の刺激に反応して移動することを「走光性」 と言うが、この走光性を持つ虫は、明るいクルマのヘッドライト付近に近付くため、特に夏場にかけて夜の走行時に付着することが多い。
付着した虫の死骸には蟻酸(ぎさん)と呼ばれる酸性物質が含まれており、そのまま放置すると、ボディの塗装面を侵食し、深刻なダメージとなってしまう。付着した虫の死骸を掃除するのは気が重く、ついつい後回しになってしまうものだが、時間が経つと、固く塗装面に付いてしまい、落とすのにも一苦労となるので時間を置かずに処理すること が一番なのだが、その際に大切なのは丁寧さよりも“早さ”だ。
ドライブ後、すぐに水洗いし、シャンプーなどで汚れを落とせば、それほど苦労なく虫は取れることが多いが、太陽の下でカリカリに乾ききった死骸はなかなか厄介だ。力ずくで取ろうとするとボディに傷が付く恐れがあるので、タオルやスポンジに水分を含ませたものを当て、固くなった虫をふやかしてから取るなどの対策が望ましい。
これまで述べたように、理想は水を使っての洗車だが、すぐに洗車が難しい場合は、濡らしたマイクロファイバーなどで拭き取っ てしまうのも1つの手だ。まずはホコリや汚れを落とすために一拭きし、その後に虫を擦り落とす。
カー用品店などで市販されている虫落とし用クリーナーを使うのも有効だ。何より大切なのは「早く処理すること」。当日中の処理が望ましく、1週間ほど放置してしま うと、塗装へのダメージは相当に深刻だと捉えた方が良い。
虫と同様に、鳥のフンや樹液などもボディへ悪影響を及ぼす。 大切な愛車に長く乗り続けるために、楽しいおでかけの後は、愛車のお手入れも“手早く”行おう。