ホイールナットはホイールを取り付けている重要なパーツ。おしゃれやカスタマイズの要にもなる部分だが、安全性やハンドリングにも関わる部分だけにきちんと機能パーツとして選びたい。
国産車の多くはハブからスタッドボルトが生えていて、そこにホイールを付けてナットで締めていくシステム。このナットが重要。純正ナットがもっとも信頼性が高いが、径が大きすぎてアフターパーツのホイールに交換した際にナットホールが小さすぎて使えなかったりする。トヨタ車の多くでは平座のナットが使われていて、ホイールが変わるとこちらも使えない。となると、アフターパーツのホイールナットに交換する必要が出てくる。
また、ホイール側のナットと接触する部分のテーパー角も重要。多くの場合は60°だが、ホイールによっては専用の角度になっていたりする。
まずはホイールに合致したナットを選ぶことが必要になる。もっとも無難なのはホイールメーカーのナットを使うこと。ADVANやRAYSなどオリジナルナットを発売しているので、ホイールセットで使えば問題はない。BBSジャパンの場合はホイールを購入するとオリジナルナットが付属している。とにかく緩むとホイールが脱落して重大な事故に即決する部分だけにホイールナットには気を配りたい。そこで出てくるのがアルミナットの是非だ。
アルミ製ナットは軽量だし、カラフルなカラーにアルマイト加工もしやすくドレスアップ時にも支持されるアイテム。しかし、サーキット走行では危険と言われる。アルミは素材として柔らかいのでサーキット走行などで大きな力が掛かるとナットが緩んだり、割れたりしやすい。また、高温になっているときに増し締めをするとスタッドボルトとカジってしまうこともあり、スポーツ走行時にはオススメできない。
何度も締めたり外したりも摩耗しやすく向かないので、定期的にホイールを外す人も不向き。どうしてもチョイスするならしっかりとトルク管理をした上で、消耗品を割り切って定期的に点検しながら使うようにしてもらいたい。信頼性の高さや、サーキット走行をするならスチール製かクロモリ製のナットを選ぶようにしたい。
ナットが貫通しているタイプか、袋になっているタイプか、どちらにするかという話もある。貫通タイプはゴミが溜まりにくく、袋タイプは内部にゴミが溜まっていくことがある。しかし、貫通タイプだと雨水が侵入してスタッドボルトがサビで赤い水が内部から出てくることもある。
気をつけたいのはスペーサーを入れようとロングハブボルトに交換している車両の場合、スペーサーを入れずに袋ナットで締め込んでいくとホイールが正しく固定される前にスタッドボルトとナットの底が当たってしまうことがある。こうなるときちんとホイールが固定されていなくて危険なので気をつけたい。ロングハブボルトとスペーサーを入れたり外したりするようなら、貫通タイプのナットを使ったほうが無難。頻繁にタイヤを付けたり外したりするなら、ホイールナットとホイールが当たる部分が別パーツのカラータイプになったナットにするのもあり。
度重なる締め付けをしていくと、ホイールのテーパーが摩耗してきてしまう。こうなるとどうにもならない。そこで少しでもダメージを防ぐべく、ナット側の接合部が別パーツになっている場合だとホイールとナットが接触する部分は回転しないので、ホイールが摩耗しにくい。
ナットを取り付ける際に潤滑するかという問題もある。クルマの取扱説明書では多くの場合、潤滑はしないように明記されていることが多い。しかし度重なる取り外しでナットもスタッドボルトも摩耗してしまうので、サーキット走行の世界では潤滑をする人も多い。
潤滑をする場合はスタッドボルトに薄くグリスを塗る。モリブデングリスやカッパー系グリス、スレッドコンパウンドなどを塗ることが多い。この時に気をつけたいのがナットとホイールのテーパー角の部分にはグリスがつかないようにする必要があること。
この部分にグリスが付いてしまうと摩擦による抵抗が少なくなり、規定トルクで締めてもスタッドボルトを大変強い力で引っ張ってしまうことになる。テーパー角の部分にグリスが付いてスタッドボルトを折ってしまうことも珍しくないのだ。
なので薄くグリスを塗る。必要以上にならないように紙タオルで拭き取るくらいの量でも十分。ボルトがカジったり摩耗しないようにわずかな量だけ潤滑すれば十分なのだ。
その上でグリスにはホコリやゴミなどが絡んで、これが研磨剤になってしまうので、定期的にパーツクリーナーで清掃脱脂して、再びグリスを薄くするというメンテナンスを施しておきたい。