高性能ブレーキキャリパーにも大きく分けるとモノブロックと2ピースの2種類がある。高価なのはモノブロックだが、なぜモノブロックは高いのか? その性能の差はどこにあるのかを解説する。
◆ますはブレーキキャリパーの仕組みを知ろう
ブレーキキャリパーはドライバーが踏んだペダルからの油圧を受けて、ピストンを押し出してパッドをローターに押し付ける装置。ローターを掴む反力で変形してしまいやすく、そうなるとブレーキタッチが曖昧になったり、片減りと言ってブレーキパッドが斜めに減るようになってしまう。こうなるとブレーキパッドの表面がきちんと使えず、ブレーキの効きもイマイチになってしまう。
そこでキャリパー自体を強くしたいところだが、大きなボディにするとホイールと干渉する問題がある。そこで大きさには限りがある。また、重くなるとバネ下重量が増えて足まわりの動きが悪くなってしまう。できるだけ軽く小型に作りたい。純正キャリパーの多くはスチール製だが、アフターパーツやレース、市販車でもスポーツカーにはアルミ製キャリパーが使われる。実はこのアルミ製キャリパーに種類があるのだ。アフターパーツの場合、そのほとんどが対向式キャリパーでローターの内側にも外側にもピストンがあるタイプ。
対向式キャリパーだとどうやってピストンを収める穴を開けるのかという話になる。リーズナブルな2ピースキャリパーの場合、右側と左側のボディをそれぞれ製作。その2つをボルトで締め込むことでひとつのキャリパーにする。対するモノブロックキャリパーとは、1つのアルミの塊から作る方法を言う。大きな鍛造アルミのブロックを5軸マシニングセンターとかNCとか呼ばれる工作機械で削っていく。このときに重要になるのがピストンを収める穴の作り方。ドリルで穴を開けるわけだが、先端が90°に曲がる切削マシンでないと穴を開けることができない。ボール盤のような機械だと穴を開ける手前に反対側のキャリパーボディがあるのでできないのだ。
この先端が90°向きが変わっている切削マシンが非常に効果。1台1億円を超えるような価格の機械で、ノウハウに基づいた高い技術を駆使して加工をしなければならない。そのため鍛造アルミブロックの高価さもそうだが、製造には時間が掛かり、機械の減価償却費などもかかってくるので必然的にコストが掛かる。だからこそモノブロックキャリパーは100万円を超えるような高価な値段になってしまうのだ。
◆ものブロックは高価なだけ? 高くても選ばれる理由はここにある
それでもモノブロックが選ばれるにはいくつかの理由がある。
モノブロックの利点1:軽量にできる
左右のボディをボルトで締め付けている。そのボルトには大きな力が掛かるの太いボルトが6~8本ほど使われて左右のボディを締結している。このボルトがある分だけモノブロックよりも重くなってしまう。わずかな重量にも感じられるがバネ下を少しでも軽くしたい場合にはモノブロックが有利とも言える。
モノブロックの利点2:剛性バランスを揃えることができる
2ピースキャリパーは左右のボディをボルトで締結する。その時のトルクも厳密に管理されて製造されるが、すべてのボルトが絶対に同じように締まっているとは限らない。もちろん実用上まったく問題はないが、わずかにキャリパーによって剛性が変わる可能性もある。そうなると効きやブレーキタッチにもわずかに差が現れる可能性があるのだ。可能性があるだけで必ずバランスが崩れている訳では無いが、究極の性能を追求するならばモノブロックキャリパーの方が剛性バランスを整えやすい。
そういった理由からレースの世界やタイムアタッカーたちもモノブロックキャリパーを選んでいるのである。しかし、2ピースキャリパーでも効きもタッチも遜色はない。わずかな軽さくらいが差なので2ピースキャリパーでの本格的なサーキット走行もまったく問題なし。また、モノブロックキャリパーの多くはパッド交換の際にキャリパーごと外す必要がある。2ピースキャリパーの場合は純正キャリパーのように固定ボルトを抜けばパッドをサッと抜くことができるので交換作業が簡単。
さらにメーカーによっては本格的なモノブロックキャリパーはダストブーツがない場合もある。こうなると頻繁に洗浄をしておかないとピストンシールにゴミが噛んでダメージを受ける場合があり、これはレースごとに清掃するような使い方が前提の設計。ストリートユースならダストブーツ付きの2ピースキャリパーの方がなにかと使い勝手が良いこともあるのだ。