チューニングエンジンで耳にする4スロ。これは直列4気筒エンジンにおいて、スロットルバルブが各気筒に装着されているもののことを指す。
◆今回のキモとなるスロットルバルブを知る
一般的にアクセルペダルを踏み込むとスロットルバルブが開いてエンジンに空気を送り込む。
現代ではドライブ・バイ・ワイヤ化されていて、ペダルを踏み込んだ信号を感知してECUがスロットルバルブをモーターの力で開き、エンジンに空気を送り込む。20年ほど前のクルマならアクセルペダルの先にワイヤーが接続されていて、そのワイヤーが物理的にスロットルバルブを開いている。スロットルバルブを通過した空気はインダクションボックスに入り、そのボックスから各気筒に空気が吸い込まれていく。
このスロットルを各気筒に1つずつ付けてスロットルとエンジンの間にはインダクションボックスはない。これが4連スロットルなどを代表に多連スロットル化された場合のレイアウトだ。レイアウトは変わるが、そもそもエンジンに吸い込まれる空気の量は排気量によって決まるので、たくさん空気が吸い込めるわけではない。しかし、多連スロットル化するメリットは、スロットルバルブからエンジンまで短い距離にできるということ。
◆シングルスロットルと多連スロットルで何が変わるのか?
シングルスロットルだとスロットルからエンジンに空気が吸い込ま出るまでに20~30cm、場合によってはそれ以上の距離を空気が移動することになる。対する多連スロットルの場合はスロットルバルブからインテークポートにダイレクトに接続されるので5~10cmの距離でエンジンに空気が吸い込まれる。
この距離の違いはアクセルに対するレスポンスに現れる。エンジンにすぐに空気が吸い込まれるので、ダイレクト感のある鋭いレスポンスを体できるのだ。だからこそ、高回転型NAエンジンではとくに多連スロットルが好まれる。より鋭いレスポンスを手に入れてシャープなエンジンレスポンスが手に入るのだ。
また、多連スロットルはハードなエンジンチューンと相性が良い。高回転重視のNAチューンとなると開度の大きなカムにすることが多い。288°や304°のようなカムシャフトだと、吸気バルブと排気バルブが同時に開くオーバーラップの時間が長く、吸気側に吹き返したりする。そういった脈動によって隣の気筒への影響があり、アイドリングが不安定になったりする。高回転は申し分ないがアイドリングでエンジンが停まってしまうことも少なくない。
ところが多連スロットルだと隣の気筒に影響を及ぼしにくいので、開度の大きなカムでもアイドリングが安定しやすい。そういったメリットもあるので、エンジンチューンに合わせて多連スロットル化が選ばれることが多いのだ。
◆多連スロットル化しての効果は?
ノーマルでは多連スロットルのクルマは少ないものの代表的なものはトヨタ「AE101/AE111」。「AE86」の4A-Gを受け継ぐエンジンは5バルブ化され、4連スロットルとともに搭載。ライバルと言われたホンダ『シビック』に対抗するためにさまざまな対策を打って出たものと思われる。それでもホンダのB型エンジンには遠く及ばないパワーだった気もするが……。
チューニングではこのAE101/111の4連スロットルを移植して4スロ化されることも多い。AE86はその代表格で、比較的簡単に4連スロットル化が可能だ。それでも制御系は一新が必要。今ならLINKなどのフルコンピュータで制御するのが一般的。そのときに気をつけたいのができればスロットルの手前にインダクションボックスがあったほうがいい。いくら鋭いレスポンスを手に入れられる4スロ化しても、エンジンルーム内の熱気を吸い込んでしまうと出力的には不利。
また、スロットルバルブ前後の距離が短いとレスポンスは良くなるが、トルクは細くなる傾向にあるので、その点からもインダクションボックスがあるとトルクが出しやすく、さらに乗りやすくなるだろう。
劇的にパワーアップするわけではないが、まさに刀を研ぐように、エンジンの鋭さやキレを高めることで、コーナーからの脱出する精度を高めることができる。玄人好みのNAチューンこそ、多連スロットル化チューンなのだ。