月の輪自動車教習所(滋賀県大津市)は、5月に福祉タクシー「月の輪クローバータクシー」の業務を開始し、6月4日に大津市消防局から民間救急の認定を受けた。救急車不足の解消に向け、教習所で培った安全運転管理のノウハウを活かし、サービスを提供する。
同社は2023年に3284名の高齢者講習を実施したが、運転免許の自主返納を検討する高齢者はほとんどいなかった。理由として「足が悪くて病院まで行く手段がない」「近くにバス停がなく買い物も苦労する」といった意見が多く、日常生活における移動手段に不安を感じる受講者が増加している。そこで、民間救急も利用できる福祉タクシーサービスを開始し、免許返納や自動車の所有状況に関わらず、地域住民が安心して暮らせる地域の実現に貢献するためにサービス開始を決めた。
現在、救急車不足が深刻な社会問題となっており、迅速な医療対応が困難な状況が生じている。全国的に出動件数が増加する中、大津市でも2023年度の救急車の出動件数は過去最多の2万0795件で、初めて2万件を超えた。その中には、救急車が不要であった可能性があるものも含まれており、緊急に病院へ搬送する必要がある人のもとに救急車の到着が遅れる恐れもある。
2022年度の調査では、滋賀県の救急車が不要であった軽症者への出動割合は59.8%で、全国で最も高い割合であった。2023年度の大津市においては68.5%と報告されており、全国平均の48.4%に対して非常に高い割合となっている。
同社の運転手は全員「介護職員初任者研修」の資格を取得しており、車両は利用者の車椅子を専用のスロープやリフトを使用してスムーズに乗降できるよう配慮している。
今後は、送迎サービスに留まらず、買い物介助などの生活に必要なサポートや利用者の多様なニーズに対応できる福祉サービスを提供していく。