10月19日(土)・20日(日)に静岡県小山町の富士スピードウェイで開催された「MAZDA FAN FESTA 2024 at FUJI SPEEDWAY(以下、MFF2024富士)」は、過去最多となる2万3,000人以上の来場者を集め、大盛況のうちに幕を閉じた。
今回のMFF2024富士では、1991年のルマン24時間耐久レースの優勝車である「マツダ787B」のデモンストレーション走行や歴代のマツダのレーシングカーのデモランが行われたほか、同社のスローガンでもある“走る歓び”を身近に体感できる場として、ロータリーエンジンの組立実演や、マツダ車に関するものづくり体験など大人も子どもも楽しめるコンテンツなどが充実。真剣な表情で製作に取り組む子どもたちや目を輝かせながらロータリーエンジンを眺める大人の姿など、その表情は十人十色だったが、共通していたのは来場者全員がイベントを心から楽しんでいたことだ。
マツダの毛籠社長も、イベントの熱気に「この2日間を通してたくさんの笑顔が溢れ、私自身も元気を頂きました。“やっぱりクルマが好きだな、クルマって良いな”と思える時間と体験を皆様にお届けできたのであれば大変嬉しく思います」とのコメントを発表。マツダ車を大切に乗るカーオーナー、マツダ車のファンたちにとって特別な2日間となったようだ。
マツダと縁深い“レストア職人のブース”を発見
サーキットにロータリーサウンドが響き渡り、その度に歓声が沸き起こる中、パドック内ではチューニングショップやタイヤメーカーなどがそれぞれブースを構え、自社商品のPRを行っていた。そんな中で今年の東京オートサロン2024に出展し、注目を浴びたロータリーシャンテと現在レストア中というRX-7が骨組みの状態で展示されているという他の出展ブースとは明らかに趣が違うブースを発見した。
このブースの主は、編集部がレストア関連の話題でたびたび取材させて頂いている長野県岡谷市の株式会社郷田鈑金の駒場豊社長である。なお、郷田鈑金は世界的な第三者検査機関であるテュフ ラインランド ジャパンより「クラシックカーガレージ認証」を取得している。特にロードスターのレストアに関しては日本でも指折りのプロショップであり、マツダとも非常に縁が深い(詳細は過去のCCP記事ー“本物の修理”でロードスターのレストアを行う「郷田鈑金」が取得した、クラシックカーガレージ認証とは?ーを参照頂きたい)。
なお、この日のデモランには駒場社長の父である駒場稔氏がレース参戦をしていた際のカラーリングを再現し、東京オートサロン2020にも出展していた「郷田RX-3」が出走していた点も見逃せない。
廃盤でも諦めずに、旧車パーツに“可能性”を感じてほしい
今回の郷田鈑金のブース内には、既に廃盤となった樹脂パーツの復刻品となる試作が数点、さらにはNAロードスター用の復刻パーツとして外板パネル、クラッチペダルなどのほか、マツダAZ-1用のポリカーボネート製フロントガラスの試作も1枚展示されていた。
樹脂パーツの復刻品の試作は、株式会社クリモトの協力の下、今回の出展に併せてFD型のRX-7の樹脂部品で廃盤になっているものを中心に複数のトライアル品を制作したという。まだサンプル段階ながら、今後の可能性を感じる商材として、実際に手に取って感触を確かめていた来場者が多かった。
またNAロードスター用の復刻パーツについては、レストアパーツ.com(ManBloom株式会社)が進めているNAロードスターの製造廃盤部品の製品化に郷田鈑金が協力しており、この日はクラッチと外板パネルが展示されていた。今後は少しずつラインナップを増やしていく予定だという。既にパーツが無かったというNAロードスターのカーオーナーにとっては朗報と言えるだろう。
もう1つ、展示品で驚かされたのが、AZ-1用に試作されたというのポリカーボネート製のフロントガラスだ。軽さと強さにおいて大きなメリットがあるポリカーボネート製のガラスは、強度が必要とされるレーシングマシンに多く採用されているが、一般のクルマにおいては、技術的な問題や量産の面などで課題があり、採用は進んでいない。
駒場社長によると「これはまだ試作の初期段階。耐久性などのテストもこれからのため、参考品だが今後楽しみにしていて下さい」と笑顔で展望を話してくれた。
いずれのパーツも今や入手困難なものばかりだが「無いものは作れば良いんです。シンプルなものづくりの原点ではないでしょうか。これまでの鈑金塗装やレストアで培ってきたノウハウに、違う強みを持った協力先があれば、さらに可能性は広がります。旧車オーナーには“パーツが無いから”と大切な愛車を手放したりしてほしくないので、ぜひ諦めないでほしい」と駒場社長は力強く話す。
愛着のあるクルマに対して、まだ乗り続けられるかもしれないという希望の光を照らすために“レストア職人”駒場豊の挑戦は続く。