国交省の「交通空白」解消プロジェクトの一環、長野県でカーシェア実証実験…法人車両100台活用 | CAR CARE PLUS

国交省の「交通空白」解消プロジェクトの一環、長野県でカーシェア実証実験…法人車両100台活用

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TRILL.がカーシェアリングサービス「OURCAR」を用いた実証実験を長野県で開始
TRILL.がカーシェアリングサービス「OURCAR」を用いた実証実験を長野県で開始 全 1 枚 拡大写真

信州大学発スタートアップ認定企業のTRILL.は11月10日、国土交通省の「交通空白」解消パイロット・プロジェクトとして、カーシェアリングサービス「OURCAR」を用いた実証実験を長野県内で開始した。

国土交通省では、全国の「交通空白」解消など地域交通の「リ・デザイン」をさらに加速し、持続可能な地域交通を実現するため、連携・協働を軸とした地域交通DX推進プロジェクト「COmmmONS」(コモンズ)が2025年6月から始動している。

本実証実験では、県内37社の企業と自治体の法人車両100台を活用し、公共交通が不足する地域に対して、非対面かつ低価格で使える新たな移動手段を提供する。これにより、住民や来訪者がより自由に移動できる環境を実現する。県全域を対象に、100台規模の法人車両を共同使用で活用するこの全国初の試みを、長野県から開始する。

現在、地方における交通サービスの縮小は、住民生活に深刻な影響を及ぼしている。長野県内でも、運転手不足や人口減少などを背景に、民間バス事業者の路線撤退が相次いでおり、2025年9月末に「犀礼線」「県道戸隠線」「篠ノ井新町線」が、2026年3月末には「鬼無里線」「高府線」「新町大原橋線」の計6路線が運行終了する予定である。

こうした状況から、新たな移動手段の確保が課題となっている。この課題解決としてレンタカーやカーシェアリングサービスが期待されるが、その多くは収益性の確保が難しい地方では十分に展開されていないのが実情だ。

一方で、本実証で活用するカーシェアプラットフォーム「OURCAR」は、「共同使用契約」という一台の車を複数人で利用し、その維持費用を分担するという仕組みを基盤としている。車両を提供するオーナーは営利を目的とせず、車両の維持費用の範囲内で共同使用料を受け取るため、従来のビジネスでは採算が合わなかった地域においても、持続可能な交通手段となり得る可能性を秘めている。

今回の実証実験では、企業の協力のもと、業務で利用していない夜間や休日の社用車100台を「OURCAR」でシェアし、地域の新たな交通インフラとして活用する。本実証を通じて、共同使用制度を活用したカーシェアリングにおける制度的、技術的、事業的な課題を抽出し、交通空白地帯の解消に向けたビジネスモデルの持続可能性を検証する。

実証実験の対象地域は長野県全域、参加車両数は100台(長野市66台、上田市22台、松本市10台、その他2台)。設置車種例はトヨタ『カローラ』、日産『セレナ』、ダイハツ『ハイゼットトラック』など。料金は300円/30分から、利用方法は「OURCAR」のwebアプリを利用する。

想定ユーザーは、公共交通機関の縮小により、日々の買い物やお出かけ、通院が困難になった地域の住民、子供の送迎や週末のレジャーなどで一時的に車を必要とする家庭、サークル活動やアルバイト、旅行などで移動手段を求める学生、地域を訪れる観光客やワーケーションなどで滞在する人々となっている。

《森脇稔》

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