1月11日(日)まで千葉県の幕張メッセで開催されていた、カスタムカーの祭典「東京オートサロン2026」において、来場者のひときわ熱い注目を浴びていたのが、トヨタ自動車株式会社がTOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)として出展した「GRヘリテージパーツ」の次なる一手だ。



トヨタといえば、廃盤となった旧車パーツの「復刻販売」に注力してきた自動車メーカーの1つだが、2026年2月1日から「シリンダーヘッド交換サービス」を開始することを発表。この発表は、旧車パーツの復刻が新たなフェーズに入ったことを予感させるものだった。そこで本稿では、メーカー主導で加速する旧車パーツ復刻の新たな可能性について考えてみる。
トヨタの覚悟…復刻部品販売から「機能再生」への踏み込み
これまでのトヨタの「GRヘリテージパーツ」プロジェクトは、生産が終了した部品を当時の図面に基づいて再生産・販売する「モノ」の提供が主軸であったが、2026年からは一歩踏み込み、メーカーの保証付きでエンジンの心臓部をリフレッシュする「コト(サービス)」の提供へと舵を切る。
背景にあるのは、旧車維持における「部品はあるが、正しく組める現場(メカニック)が足りない」という深刻な課題だ。今回のサービスでは、AE86に搭載される「4A-GE」などのエンジンのシリンダーヘッドを、最新の製造技術で復刻。それをメーカーの保証付きで交換・リフレッシュできる体制を整えるという。
鋳造という多額の投資が必要な工程をメーカーが引き受けることで、長年懸案だったエンジン心臓部の枯渇解消が期待される。また今回メーカーが復刻部品供給に留まらず「旧車の走行性能を永続的に保証する」という強いメッセージを発信した意味は極めて大きいと言え、展示されたAE86用の「4A-GE」のシリンダーヘッドや、5月から提供開始予定のシリンダーブロックは、まさにその象徴であり、トヨタが旧車を文化遺産(ヘリテージ)として永続させるという強い覚悟がうかがえた。

役割分担による全方位の“旧車価値の保護“実現に光
トヨタがエンジンなどの安全に関わる「中身」の復刻を担う一方で、今回のオートサロンには廃盤となった外板パーツ、いわゆる「器」の復刻で真価を発揮していた出展者も存在していた。
レストアパーツ.com(本社:岐阜県各務原市/井上尚志代表)が展示していたAE86用のスチール製プレスパーツは、メーカーがカバーしきれない広範な外装需要を補完するものだ。トヨタのような自動車メーカーがエンジンの性能を担保し、レストアパーツ.comのような企業が腐食したボディを再生する。この役割分担とも言える協力関係が成立することで、旧車レストアの信頼性と効率は飛躍的に向上していくだろう。



今回の東京オートサロン2026で示されたのは、トヨタの旧車市場への深いコミットに加え、旧車維持において各分野で強みを持つ企業が、その強みを活かすことで、旧車保護の体制が自然と構築されていく未来予想図だ。
特に2月1日から始まるトヨタのシリンダーヘッド交換サービスは、国内の自動車アフターマーケット全体における「ヘリテージビジネス」のあり方を再定義する試金石になる。その意味で2026年は「旧車維持」において、大きな転換点を迎える年になるのではないだろうか。

