自動車整備技術の高度化検討会が描く、持続可能な整備ネットワークの未来 | CAR CARE PLUS

自動車整備技術の高度化検討会が描く、持続可能な整備ネットワークの未来

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自動車整備技術の高度化検討会が描く、持続可能な整備ネットワークの未来
自動車整備技術の高度化検討会が描く、持続可能な整備ネットワークの未来 全 4 枚 拡大写真

全国の自動車ユーザーが、どこにいても安全・安心な整備を受けられる環境を維持できるのか。その鍵を握るのが、国土交通省が平成23年度より開催している「自動車整備技術の高度化検討会」での議論だ。

本記事では、今年2月に取り上げた国土交通省の取り組み「あなたの愛車が「整備難民」になる? 国交省がIAAE 2026で示した「整備技術の高度化と診断機の機能向上に向けた取り組み」」について、その続報となる「第32回 自動車整備技術の高度化検討会」で明らかになった情報をお伝えしたい。


「ディーラーでしか直せない」が招く日本全体の整備能力不足

平たく言うと、2022年(令和4年)7月より新型車に順次適用されたサイバーセキュリティに関する国際基準(UN-R155)への対応に伴い、多くの車両にセキュリティゲートウェイ(SGW)が搭載されるようになった。このSGWにより純正スキャンツールという主にディーラーが用いる診断機でメーカーサーバーを通じた認証を行わなければ、自動ブレーキの調整(エーミング)といった重要な整備作業が行えなくなる、というのが現状の課題である。

それに対して国土交通省は、純正スキャンツールの入手・レンタル環境の整備と汎用スキャンツールの機能向上(情報開示の拡充)という2つの対策方針を打ち出している。ここまでが前回までの流れだ。

それに対して、2026年3月19日に開催された「第32回自動車整備技術の高度化検討会」では、より具体的な対策案について議論が行われた。

ブラックボックス化を牽制する「情報提供窓口」の新設

令和7年度に自動車特定整備事業者を対象に実施された「困りごと調査」では、503件の回答が寄せられ、輸入車を中心としたマニュアル入手経路の不明確さや、純正スキャンツールの維持費高騰、提供時の審査落ちといった現場の窮状が改めて浮き彫りとなった。これに対する具体的なアクションとして、輸入車整備マニュアルの入手手順や条件の可視化を進めることに加え、新たに「情報提供窓口」の設置が決定した。

これは、4月から12月まで試行的に設置され、純正スキャンツールの提供を断られた事案や入手困難な理由などの情報を国が直接収集するものである。事実確認や関係メーカーへの適切な指導に繋げることで、情報のブラックボックス化を防ぐ狙いがある。

スキャンツール新体制の中核はNALTEC…標準機の国認定も

前回(第31回)の会合で提示された汎用スキャンツール機能拡充のロードマップは、今回大きな進展を見せた。自動車メーカーから基礎OBD情報を一元的に購入し、ツールメーカーに提供する中核となる「第三者機関」が「独立行政法人自動車技術総合機構(NALTEC)」に正式決定した。令和8年夏頃の運用開始に向けて急ピッチで準備が進められている。さらに注目すべきは、この新スキームの運用に伴い、「標準機」を国が認定する制度の創設が検討されることになった点である。これにより、汎用ツールの機能水準が担保され、独立系整備工場への普及が後押しされることが期待される。

救済措置としての「駆け込み寺」構想が具体化

汎用スキャンツールでは対応困難なエーミング作業などのセーフティネットとして、純正スキャンツールの活用拡充策も具体化した。ツールメーカーが保有・提携する整備拠点を「駆け込み寺(外注サービス)」として設定し、純正スキャンツールを用いた作業を請け負う体制が構築される。この施策は、令和8年度以降に全国3地域程度で試験的に導入される予定だ。同時に、準備が整った自動車メーカーから順次、純正スキャンツールの「短期貸出」を開始する方針も示されており、高度な整備へのアクセス権を確保する動きが本格化している。

今回の第32回検討会は、第三者機関の決定や情報提供窓口の新設など、これまでのロードマップから具体的な「制度と拠点」の構築へと大きく前進した印象を受ける。高度化する自動車のアフターマーケットにおいて、独立系整備工場が最新車両を扱える環境づくりは着々と進んでいる。

《カーケアプラス編集部@市川直哉》

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