【インタビュー】"効率"はエコだけじゃない!EVパワーモードでコスパを実感してほしい…トヨタ プリウスPHV 豊島チーフエンジニア | CAR CARE PLUS

【インタビュー】"効率"はエコだけじゃない!EVパワーモードでコスパを実感してほしい…トヨタ プリウスPHV 豊島チーフエンジニア

特集記事 インタビュー
トヨタ 豊島浩二・製品企画本部チーフエンジニア
トヨタ 豊島浩二・製品企画本部チーフエンジニア 全 17 枚 拡大写真
4代目『プリウス』をベースとしたプラグインハイブリッド車、新型『プリウスPHV』の日本発売がアナウンスされ、事前試乗の機会を得た。"効率"を追求し、大容量リチウムイオン電池搭載によるEV走行距離の延長など環境性能を高めているが、新型が目指した効率は、「そこにとどまるものではない」という。開発を指揮した豊島浩二・製品企画本部チーフエンジニアに話を聞いた。


----:いまでこそ、輸入車を中心に多くのプラグインハイブリッド(PHVまたはPHEV)が市販されていますが、トヨタは日本国内において、初めてPHVを市場投入したパイオニアメーカーです。一方で、先代プリウスをベースとしたモデルは、市場では少々苦戦したのではないかと思いますが、その原因はどこにあったとお考えでしょうか。

豊島CE(以下敬称略):トヨタのハイブリッドシステムのPHV化にあたり、手探りの状態で開発を始めました。EVの航続距離に関しては、利用者の行動範囲、コスト、重量増、パッケージング等々を考えた時、電池容量4.4kwh、EV走行距離26.4kmが合理的な値と考えて商品化しました。が、実際社会に出してみると、市場の反応はそれを薄味だと捉えたようですね。どういうことかというと、ハイブリッドというベースがある中で、新たなPHVというモデルを出してみた時に、その性能差が薄かった。ルックスの違いなども含めて、その薄味が(原因で)価格差に対して妥当ではなかった…と反省しました。

----:ということは端的に言って先代は失敗だったというのが新モデルの出発点ですか?

豊島:成功ではなかったですね。世界販売約7.5万台。競合他社さんの販売状況を考えた時に、トヨタの販路に対して充分な販売が出来たかというと、それはできていないので、その面で成功したとは言えないのです。

----:一言でPHVといってもメカニズム的には色々あるわけですが、そんな中でトヨタはトヨタハイブリッドシステム(THS)を利用しています。このTHSをベースにしたトヨタPHVのメリットはどこにあるのでしょうか

豊島:トヨタは発端として環境車を作ろうという考えでハイブリッド(HV)を推し進めてきました。そういう意味でTHSはHVとして見た時、トップレベルの燃費効率を持ったシステムだと考えています。その部分を強みにおきながらEV走行をどう味付けするかという点で、今回の開発において色々な意味での”効率”を考えました。

----:「色々な意味での効率」というのをもう少し具体的に教えて頂けますか。

豊島:まず、エネルギー効率。PHVはHVに比べて大きな電池を積むなどで150kmほど重量が増していますが、逆に大きな電池によるエネルギー回生効率アップなどでHVモードでも1%以上LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の計算では効率が良くなっています。

EVモードで言えば、日本はまだ自然エネルギー発電の割合が少なく、主に火力発電で電気を作り出していますから、HV車で走ってもCO2発生量はあまり変わらない・・・と言う状態になっています。しかし将来自然エネルギーあるいはそれに準ずるエネルギーで発電する環境があたりまえになった時に、充電で走ることができるということは、今後はより環境負荷が少なく効率的になって行くと考えられるわけです。

----:そのEVモードの電池搭載量は従来の2倍の8.8kwh。60km以上のEV走行が可能になっています。試乗してみるとEV走行がパワフルになりエモーショナルなドライビング感覚を得ました。新型PHVはつまり、このEVモードを作りたかったのではないかと感じたのです。

豊島:仰る通りです。ONとOFF。このクルマには二面性を持たせました。EVモードの運転の楽しさと、HVモードの燃費効率、(といっても4代目のプリウスはこれまでのように燃費のためにお客さんに我慢を強いるようなものはやめようという考えで開発しています)これをひとつのクルマで、もっとも効率的に実現しました。

----:効率的に実現というのはHVモデルに対して大きな電池を積むだけという開発効率のことですか?

豊島:それも”効率”ですね。今回の新型では、従来HVシステムでジェネレーター(発電機)として使っていたモーターも駆動力として使えるような新たなPHVシステムをつくりました。デュアルモータードライブシステムと呼んでいますが、EVモードのパワーアップのために、大きなモーターに載せ替えるのではなく、従来のHVシステムから最小限の改良で大きなパワーを得ることができました。このメリットは量産すればするほど大きく、ユーザーには価格面で還元ができるはずです。

----:確かに年間120万台以上量産しているトヨタのハイブリッドシステムと部品共用できることは、コスト面でも信頼性の面でもライバルに対してアドバンテージとなり、かつ”効率”は良くなりますね。新型プリウスPHVの価格はまだ発表されていませんが、期待できるということでしょうか。

豊島:価格や燃費などまだ決まっていない数字はお伝えできず心苦しいのですが、必ずHVモデルに対して価格差はあります。その価格差は主にEVモードに対する価値ですので、倍以上に伸びた走行距離とともに、これまでのHVとは一線を画するパワフルでスポーティな走りを提供することで、価格上昇に対する付加価値アップの”効率”という部分でも”濃い”クルマをつくることができたと思っています。

つまりHVプリウスより高い対価を支払って頂いても、上乗せしたドライビングプレジャーがあり、短距離ではそれを楽しみ、長距離では環境に優しいという両面性を持たせているのが新しいプリウスPHVだとご理解ください。

《中村 孝仁》

この記事の写真

/

特集