商用車の“自動運転”と“電動化”最新技術を披露…ZF グローバルプレスイベントレポート | CAR CARE PLUS

商用車の“自動運転”と“電動化”最新技術を披露…ZF グローバルプレスイベントレポート

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シャシー・駆動系コンポーネントメーカーのZFは6月29日、ドイツ・アーヘン市近郊のテストコースで商用車向け最新技術を披露するグローバルプレスイベントを開催した。

これは9月にドイツ・ハノーヴァーで開かれる「IAA国際商用車ショー」に向けた恒例のプレビューで、今回はエアブレーキ関連機器大手のワブコ(ベルギー)との共同開発による大型トラック用危険回避操舵の支援機構「EMA」(エバーシブ・マヌーバ・アシスト)をはじめ、半自動運転を実現する「HDA」(ハイウェイ・ドライブ・アシスト)や自動駐車支援機能「SAFE RANGE」(セーフ・レンジ)、そして電動駆動化された“農業用トラクタ”や“EV大型バス”など自動運転や電動化を中心に様々な最新技術を搭載した試験車両がデモ走行を行った。

会場の様子

1915年、ツェッペリン飛行船会社によってドイツ南部のフリードリヒスハーフェンに設立されたZFの社名はドイツ語で歯車製造(工場)を意味する「Zahnrad Fabrik」に由来する。現在はギアボックスを中心にシャシー~セーフティテクノロジー分野を広く手掛け、昨年5月にはアメリカの自動車部品製造大手TRWオートモーティブ社を買収。世界最大級のグローバルサプライヤーの一つに成長した。

IAAショーの目玉として今回最も注目を集めた「EMA」は自動操舵によって衝突被害軽減ブレーキが衝突を回避する能力を支援する機構だ。具体的には、まず衝突被害軽減ブレーキ(ワブコ製「オンガードアクティブ」)が前方に衝突の可能性がある障害物を検知し、ドライバーに音声などで最初の警告を発令した段階でEMAのシステムが起動する。そのまま障害物に接近した場合には、第2段階の警報として軽い自動ブレーキが掛けられるが、この時点以降にドライバーが回避のために右か左にステアリングを切るとEMAが作動。減速しながら障害物を回避するように一車線分のレーンチェンジを行い、続くフルブレーキによって車両を停止させる。

「EMA」デモ走行の様子

最新の大型車に採用されている「EBS」(電子制御ブレーキシステム)はフルエア式サービスブレーキを電子制御化するとともにセミトラクタの各輪とトレーラ軸の5チャンネルを独立して作動させることで高い応答性と安定した制動をもたらす。この機能を活用して車体のヨーモーメントをコントロールするとともにトラクタとトレーラが折れ曲がって接触するジャックナイフや転倒を抑止するのがVSC(などと呼称されるいわゆる横滑り防止装置のトラクタ版)で、EMAはVSCに自動操舵機能を協調させたものだ。回避動作はECUが算出した軌道に沿ってステアリング主体で行われ、VSCはこれを補うように作動。滑りやすい路面でも安定した姿勢による車線変更と制動を実現する。自動操舵はステアリングギアボックスの入力部に電動モーターを組み合わせたZF-TRW製の「ReAX」が担う。

ZF-TRW製「ReAX」

現時点では車両の全方位を捕捉するセンサー類が備わらないため回避の可否と方向はドライバーの判断によるが、将来は自動化に向かうことも期待される。会場ではGCW(連結総重量)約35tのEC標準型セミトレーラ(トラクタは最新のダフXF)に同機構を搭載した試験車両がウェット路面上で初速80km/hからのデモ走行を繰り返したがあくまで安定した作動が印象的だった。


「HDA」は乗用車用を応用したレベル2の半自動運転装置である。レーダーとカメラセンサーが前方の状況を検知し、意図せずに車線を逸脱するとドライバーに警告して「ReAX」による自動操舵で車両をレーン中央に保持。ドライバーは感圧センサー付きのステアリングに常時手を触れていることが求められるが、10秒間以内であれば手離しの自動運転も可能だ。

「HDA」デモ走行の様子

また、「SAFE RANGE」はセミトレーラの後退時のステアリング操作を自動化したもの。操舵は目標物に向けて算出された軌道に基づいて制御され、ZFの新世代AMT「トラクソン」のハイブリッドモジュールに備わるEV走行機能により、モーター力だけで微速で自動走行する。ドライバーは車外から専用のタブレット端末を使って操作する仕組みだ。同システムの特徴は、車両ではなくプラットホームなどの設備側に固定カメラと軌道計算用のコンピュータを備えること。複数の車両にシステムを導入するにはこの方がコスト的に有利という。設備と車両の通信は専用のWi-Fi回線で行われる。

「SAFE RANGE」デモ走行の様子

このほか電動化関連ではエンジンを発電専用として電動駆動化した農業用トラクタの提案とともに、ハブの内側にモーターを組み込んだ電動ドロップセンターアクスル「AVE130」を搭載するEVノンステップバスが試乗に供された。125kWの電動機2基を擁する「AVE130」は今年のIAAでダイムラーが発表するEV大型トラックの習作「アーバンeトラック」にも採用されるなど、今般進捗が期待される大型車のEV化やハイブリッド化に一役を担うことになりそうだ。

電動駆動化したトラクター

《多賀まりお》

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