現在、宮城スバルの旗艦店「ベストショップ栗生」(宮城県仙台市青葉区)で、フルレストア中のスバル『ff-1』(1970年)や、初代『レオーネ4WDエステートバン』(1972年)などを展示している。5月15日まで(5月1~5日、10、11日は休)。
宮城スバルは、スバル4WD発祥の地だ。1970年、乗用車タイプの4輪駆動車を探していた東北電力からの依頼で、宮城スバルが『1000バン』をベースに日産『ブルーバード』(510型)のドライブシャフトとデフを追加するなどしてプロトタイプを試作。これを富士重工業へ生産化を提案、1971年の東京モーターショーで発表した『1300Gバン 四輪駆動車』は大評判となる。そして1972年には『レオーネ4WDエステートバン』として市場デビューし、現在に至るまでのスバル「シンメトリカルAWD」の原点となった。
宮城スバルでは4月9日を「四駆の日」記念企画とし、ベストショップ栗生店で5月半ばまでこうした所縁のある車両を展示するというもの。同社では昨年から「SUBARU ff-1 レストアプロジェクト」を行っており、完成には至ってはいないがこの機会にと、途中経過の車両を”お披露目”。合わせてスバル本社の技術資料車コレクションの1台であるレオーネ4WDエステートバンと、地元オーナーから譲り受けたという『スバル360』も並んだ。
レストアプロジェクトは、宮城スバルの歴史を振り返るため、その原点といえる車両を1年がかりで取り組もうというもの。「当社で働いている人たちに誇りを持ってもらいたいのと、仕事がマンネリ化しないためにも職種を超えたコミュニケーションを図ろうという狙いもありました」というのは、プロジェクトの中心となった東北統括本部技術支援課の藤枝義寛課長。お陰でメンバーは各店舗からメカニックを中心に女性セールスも2名加わるなど、幅広い陣容に。
車両は本来なら基本となった1000バンといきたいところだが、なかなか見つからず、栃木にあった1100のff-1バンを購入することに。45歳の藤枝課長を始めメンバーは誰もff-1を触ったことはなく、「フロントタイヤを外してみたらブレーキがないのにはびっくりしました」(トランスミッション側に配置するインボードブレーキのため)というように、独自の機構に驚いたようだが、60歳を超える経験のある社員からのアドバイスや社内に残っていたサービスマニュアルなどを参考に作業を進めていったという。
エンジンやミッション、ブレーキ、サスペンションなどはもちろん、新車の状態にするためにサビ取りも徹底。すべての部品を取り外し、ハーネス類も刷新した。塗装はオリジナル色にするべく、測定器のカラーセンサーと自動で調色するアプリを使ってベース色を作り、人の目で微調整を行うという最先端の工法を取った。
こうしたレストア作業は昨年6月に開始。予定では今頃完成しているはずであったが…。新型コロナの影響で、計画した日程でなかなか人員が集まれない時期があり、今年3月に起きた震度6弱の地震で工場やショールームなども被災、ドアパネルやボンネットなどがへこんだりして再作業せざるを得なくなったのである。また現在の車に見立てて作業期間を定めたが、昔の車は構造がかなり異なっているため予想外の遅れとなったという。
予想外のことは多々あったが、得たものもたくさんあるという。「あらためて昔の車はメカニカルな部分が多いというのが分かりました。こうしたものを分解していると、なぜ現在のような電子制御になったのかイメージが湧いてくるなど、良い勉強材料となっています」(藤枝課長)
結果、現在ショールームに展示されているff-1は外装パネルなどのない”スケルトン”の状態だが、却ってむき出しの水平対向エンジンやがらんどうの車内の造りなどが非常によく観察できて興味深いのだ。
ベストショップ栗生の及川俊宏店長も、「今、世界のスバルとなったルーツがここから始まったということを身近に感じてもらえるはずです。メーカーでレストアしたレオーネと、ディーラーでレストア中のff-1を同時に見られるのも面白いと思います。最新鋭のスバル車と共にじっくり見ていただければ」とアピール。藤枝課長によれば今年上半期いっぱいの9月までには完成させて改めてお披露目をすることになるそうだが、この貴重な状態が見れるのは今だけ。スバリストならずとも足を運んでみてはいかがだろうか。