東京オートサロン2023会場内を移動中、近くから「オー」という声が聞こえたので、そこに行ってみると、カヤバのブースだった。そのブースではキャンピングカーが展示してあり、しかもそのクルマはトランスフォームしていたのだ。
カヤバといえば、ショックアブソーバやサスペンションシステム、油圧ポンプなどの自動車部品をはじめ、二輪用のフロントフォーク、鉄道用ダンパ、さらにはコンクリートミキサ車といった特装車を製造している企業で、その技術力には定評がある。ただ、業績的には2018、19年と赤字を計上し、伸び悩んでいる。
そんなカヤバが持っている技術を結集してつくったのが、今回のキャンピングカーコンセプトだった。トヨタ自動車の『ダイナ』をベースに「従来では実現できない居住性、そして走る楽しさの両立を追求して、従来のお客の不満や困りごとを解決するための提案をたくさん盛り込んだ」(カヤバの説明員)という。
まずは油圧ポンプを搭載した電動油圧ユニットより、天井が60cm伸び、横に40cm広がるのだ。走行時は収納することで旋回時のふらつき、高速道路走行時の風の影響を抑制でき、停泊時には縦横に拡張することで高い居住性を確保できる。
次はレベリング機能付きダンパによって、停泊時に快適な居住空間を実現できるということ。このダンパはレベリングとサスロックの2つの機能を統合した新開発の専用機構で、3つの機能を有しているという。一つ目が走行時における普通のダンパとしての機能、2つ目が停泊時に車両の傾きを補正するレベリング機能、3つ目がサスペンションをロックすることで就寝時の車両の揺れを軽減する機能である。
しかも、これらの操作は同社が開発したアプリをインストールすると、スマートフォンやタブレットで簡単にできるのだ。実際のデモで操作して見せたが、実にスムーズにキャンピングカーがトランスフォームしていた。
そのほか、「横風や段差による転倒リスクの低い安全なキャンピングカーの実現を目指し、カヤバの乗用車向け電子制御ダンパ技術を応用した」とカヤバ関係者。
また、ブースの中央にウッドデッキが設置され、その上ににリクライニングシートやジャグジーなどが載っているので、何か意味があるのかと思ったら、実はこれが牽引用のキャンピングトレーラーコンセプトだった。
カヤバの油圧技術をふんだんに取り入れたトレーラーで、幅が倍に広がり、天井にはソーラーパネルが設置され、ひさしがシリンダーで3段階に伸びるようになっている。アウトリガーも装着されているので、不整地でも水平を保ち、固定することも可能になっているそうだ。
同社の担当者は、「これからいろいろなイベントでこのキャンピングカーを披露し、お客の反応を見たうえで、事業化を検討していきたい」と熱い思いを語っていた。自動車業界は100年に一度と言われる大変革期の真っ只中で、これまでの延長線上で事業を考えていたら、取り残される可能性もある。その意味で、カヤバのキャンピングカーが今後どのようになっていくが注目される。