トヨタGAZOOレーシングが東京オートサロン2023で発表した『AE86 BEVコンセプト』。今から40年近くも昔に発売され、なお高い人気を集めるAE86型 カローラレビンのパワーユニットをEV化したという、前代未聞のコンセプトモデルだ。
「愛車を守るカーボンニュートラル」をテーマとして、レクサス主導による開発が行われた「EVハチロク」。外見はカスタムされた一般的なレビンと特に変わりないが、中身は驚きの魔改造だ。
◆何かがおかしい? EVならではのユーモア満載
白と黒のツートンカラーが特徴的な“パンダレビン”。ローダウンされた足元にRSワタナベのホイールという組み合わせは、まさに昔懐かしい定番のカスタムといった感じではあるが、BEVコンセプトにはクルマ好きが思わず微笑んでしまう、ユーモアあふれるアクセントが盛り込まれている。
フロントグリルとリアハッチのステッカー「LEVIN」の文字をよく見ると「EV」の2文字が緑色に塗られており、ボディサイドにはAE86人気の火付け役となったクルマ漫画「頭文字D」のパロディとして「電気じどう車(実験用)」というデカールが貼られている。
リアガラスには「無鉛ガソリン」ではなく「交流電源をご利用ください」という昔懐かしいシールが。さらにリアハッチへ視線を落とすと、旧車お馴染みの「TWIN CAM 16」ステッカーがなんと「NON CAM 0」へと変わっている。
遊び心の詰まったBEVコンセプトのエクステリア。往年の名車へのリスペクトと最先端EVとしてのアピールが重なった、まさに粋な計らいと言えるだろう。
◆EVでも楽しい走りを! 驚きのメカニズム
ボンネットを開けエンジンルームを覗いてみるとあの名機4A-Gは載っておらず、ハチロクとは思えない不思議な空間が広がる。補器類の少ない綺麗でコンパクトなユニットには、なんと本家と同様にマニュアルのトランスミッションが組み合わせられているのだ。
シフトノブやサイドブレーキといったクルマ好きには欠かせないアイテムが残された車内には、激しい走りから乗員を守るロールバーが張り巡らされる。後部座席は撤去され、まるでレーシングカーの安全タンクのような見た目のバッテリーが「LEXUS」のエンブレムとともに鎮座しているのだから面白い。
電気とモーターの強みである強大なトルク特性を生かし、AE86 BEVコンセプトは多少の重量増を補うパワーと加速を手に入れたという。「クルマ好きを誰ひとり置いていかない」と豪語するトヨタ。近い将来、皆様の愛車がEVへと生まれ変わり、モータースポーツを楽しむ光景が見られるかもしれない。