クルマが持つ本来の性能を取り戻す修理とは…フロント業務の見直しが求められる特定整備時代の車体整備を学ぶ研修を実施【ARCネットワークサービス】 | CAR CARE PLUS

クルマが持つ本来の性能を取り戻す修理とは…フロント業務の見直しが求められる特定整備時代の車体整備を学ぶ研修を実施【ARCネットワークサービス】

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研修には、用品販売店、整備事業者、鈑金塗装事業者、地域部品商、車買取業者など多岐にわたる業態の事業者が集った
研修には、用品販売店、整備事業者、鈑金塗装事業者、地域部品商、車買取業者など多岐にわたる業態の事業者が集った 全 5 枚 拡大写真

株式会社ジェイシーレゾナンス(代表取締役社長:松永博司)は、アフターマーケット事業者の地域連携を促進するARCネットワークサービス利用者を対象とした研修会「特定整備入庫対応研修(車体整備編)」を2023年5月12日、山梨県南アルプス市にある鈑金塗装工場「イチムラボディーショップ」にて開催した。昨年9月より「特定整備入庫対応研修(基礎編)」を全国各地で開催してきて、今回から特定整備入庫対応研修の第2弾・車体整備編がスタートした。研修には、一言にアフターマーケット事業者と言っても、用品販売店、整備事業者、鈑金塗装事業者、地域部品商、車買取業者など多岐にわたる業態の事業者が集い、それぞれの立場で特定整備時代の車体整備における入庫対応について学んだ。

対象は鈑金塗装事業者だけでなく車体整備のフロントを担う可能性のある全てのアフターマーケット事業者

本研修は、同じく特定整備入庫対応研修(基礎編)の内容を踏まえて、特定整備時代の車体整備において車の安全性を守るために知っておくべきことを、自動車の修理について顧客対応を行う可能性のある整備事業者や用品販売店、カーディーラー、ガソリンスタンド、車買取業者など幅広い事業者に向けて分かりやすく伝えることで、自社で行うべきことと地域の鈑金塗装事業者と連携をすることで対応すべきことを明確にし、複雑化する車体整備の対応を見誤りエンドユーザーに対して有形無形の損害を与えてしまうことのないようにすることを目的にしている。実際に、見た目はキレイに直っていても車が従来持っていた安全性は戻っていないような修理が行われているケースも少なくない。クルマが進化を遂げて様々な安全装置が搭載されているにも関わらず、それら装置が搭載される車体そのものが正しく修理されていなければ、逆に交通社会の安全を脅かすことにもなりかねない。そこでARCネットワークサービスでは、36ページに及ぶオリジナルテキストを作成し約2時間の研修プログラムを作成した。

車体整備は全ての受付窓口であるフロントの体制を再構築すべき

今回研修プログラムは、
第1章・クルマの進化と損傷の変化
第2章・クルマの進化が与える車体整備の変化と影響
第3章・外注先の選定指標
第4章・車体整備のお客様対応
第5章・車体整備の業務の役割分担
5章立ての構成で作成されている。

まず第1章では、交通事故撲滅を目標にクルマが急速なスピードで進化を遂げていることを、構造的な面やマルチマテリアル化とそれに伴う接合技術の変化、そしてADAS装置の搭載について学ぶことで理解していく。

そして第2章でその進化が車体整備にどのような変化や影響を与えており、故に具体的にどんなことに注意をしなければならないかを明らかにしていく。そしてここでは、基礎編で学んだ通り、特定整備下においては認証(要件)の問題、設備の問題、作業場の問題、そして技術的な問題など、様々な条件によって、整備作業の実施が制限され、自社で作業が完結出来ない場合もあるため、電子制御装置整備については、自社の作業範囲の可否を判断し、自社で出来ない作業については外注に依頼する連携体制を明確にする必要性を説いている。

1章、2章の内容を受けて3章では、パートナーとしての外注先の選定とその指標について、どのような作業場の環境を持ち、どのような認証を持っているか、整備や修理の技術はもちろん、どのような設備を保有し、その結果どのような認定を持っているか、また多岐にわたる電子制御装置のエーミングはどこまで実施できるか。その実績や料金は? など、選定条件となる指標について検討していく。

続く第4章では、車体整備とは切っても切れない関係である自動車保険について触れていく。そもそも車体整備においてエンドユーザーの要望と修理におけるゴール設定は必ずしも一律ではなく、どのような損傷で、どのような保険に入り、どの特約が付帯されているのかによって、自費で修理をすべきなのか保険を利用すべきなのかも異なり、いかに提供する価値を最大化するかが車体整備事業者の役割といっても過言ではない。

そして最後の第5章では、前述した点を最優先に考えた場合「車体整備は全ての受付窓口であるフロントの体制を再構築しなければならない局面を迎えており、車体整備事業者にとっても合理的な選択が行える体制の構築が求められている」と研修の結びへと進んでいく。

車体整備のスペシャリスト市村智氏による講演と工場視察を併催

さらに本プログラム終了後には、本研修の会場である株式会社イチムラボディーショップの代表取締役・市村智氏による講演「車体整備における見積もりの難しさ」と同社の工場視察が行われた。市村氏は2013年に開催された第1回BPグランプリ 見積もり部門で日本一になった経歴を持っており、2016年に2億円以上を超える費用を投入し建設した工場には海外からも視察や取材がくるほど最高水準の設備を完備している。市村氏は鈑金塗装のプロフェッショナルとしての矜持を感じされる熱い言葉を参加者に発し、見積もるということの奥深さを伝えた。そして工場視察では自身のこだわりの工場づくりについても説明が行われた。

クルマの進化、安全性の飛躍的な向上により、車体整備は今根本から見直しが求められている。お客様が望む修理、そしてお客様が本当のメリットを享受できるよう、自動車アフターマーケットは全力でそのニーズに応えていかなければならない。そしてまたエンドユーザーも、クルマの進化により修理が高度化していることや、変化に対応できている車体整備事業者とそうでない事業者がいることを知っておく必要がある。そうしなければ自分や同乗者の安全を守ることもできないし、自分が加害者になってしまう恐れもあることを、クルマに乗る人の責任として持っていて欲しい。

《カーケアプラス編集部@市川直哉》

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