“空飛ぶ車”が少なくない企業で開発されているが、それらのほとんどは“小さな飛行機”であり、道路を走る車ではない。そんな中、米カリフォルニアに本社を置くASKAが、公道も走れる空飛ぶ車、『A5』をモントレー・カーウィークに展示、デモンストレーションを行なった。
◆自動車イベント週間でデモ
モントレー・カーウィークは、8月11日から20日にかけてカリフォルニア州モントレー郡各地で開催される、ヒストリックカーとモダンカーの展示会など多数の自動車イベントの総称だ。
ASKAは開発中のA5をモントレー・カーウィークで披露し、自動車モードから飛行機モードへの変形、プロペラの回転、そして公道での走行などを公開デモンストレーションした。自動車のSUVサイズのA5は、公道を走行するとともに垂直離着陸と飛行機としての飛行が可能だ。空陸両用の空飛ぶ車として世界初の実用化をめざす。
A5の定員はパイロット1名、乗客3名の4人乗り。ヘリコプターのように垂直に離着陸でき、短距離の滑走路での離着陸も可能なSTOL機でもある。空中では小型飛行機のように飛行し、主翼による滑空も可能だ。飛行用に6基の独立したモーターシステムを装備する。そして翼を格納するとSUVほどの大きさになり、公道を走るとともに通常の駐車場に駐車できる。
◆プラグインハイブリッドで航続400km
A5の動力は飛行も走行も電動だ。バッテリーに加えて、ガソリン機関を発電機の動力として搭載して飛行中にバッテリーを充電する、レンジエクステンダー付きのプラグインハイブリッドだ。飛行航続は250マイル(約400km)、最高飛行速度は150マイル/h(約240km/h)とされる。緊急着陸用のパラシュートも装備されている。
A5は6月30日に、FAA(連邦航空局)から認証書(COA)と特別耐空証明(旅客や貨物の商業輸送に使用できない)を取得し、ASKAは続いてFAAの型式証明取得のための手続きを開始した。8月2日には安定したホバリングに成功した。いっぽうDMV(米国自動車管理局)よりナンバープレートも取得し、シリコンバレーの公道において延べ300マイル(約480km)以上の路上走行テストに成功している。
◆価格は1億1600万円
A5の価格は1機78万9000ドル(約1億1600万円)で、2026年の商業化を計画している。2021年から予約を受け付けており、5000万ドル(約73億円)以上を受領しているという。
今後の開発ステップについて、ASKA社の共同創業者で会長のカプリンスキー真紀氏は「Advanced Air Mobility(いわゆる空飛ぶ車)はファーストマイルとラストマイル、および既存の地上インフラと連携することで普及する。一般の人々との交流から、エアモビリティへの理解が高まってきていることが実感でき、予約注文も着実に増えている」と説明している。
モントレー・カーウィークでA5は、自動車モードから飛行機モードへの変形を披露、プロペラをゆっくりと回した。その後自動車として公道を走行、ショッピングセンターの駐車場に駐車した。