ブレーキパッド選びは奥が深い。使いやすいモデルに出会えればこの上なく運転が楽しくなるが、そのパッド選びの基準が高価なモデル=高性能とも言えない。自分に合ったモデルの選び方とは。
◆ブレーキが扱いやすくなる
ブレーキパッドはエンジンオイル、タイヤと並ぶ消耗品であり、純正品以外にもさまざまなものが販売されている。純正品はオールマイティな性能を持っているが、もともとのブレーキの効き方に癖のある車種もある。そういった場合にパッドを変えるだけで驚くほどブレーキが扱いやすくなることも多い。
また、高速道路移動が多いとか、峠道をよく走る、人や物をたくさん載せることが多いなど、使い方によっても最適な効きのブレーキは変わっていく。ならばそれに合わせたパッドをチョイスして、もっとクルマを楽しんでもらいたい。
◆高価な物ほど良いとは限らない
そこでブレーキパッド選びとなるが、高い物ほど良い物とも限らないのが難しいところ。例えばエンジンオイルなら、基本的に高価なもののほうが高性能。エンジン音は静かになり、なめらかなフィーリングで燃費も良くなったりする。
ところがブレーキパッドはこの法則が当てはまらない。基本的に高価なモデルほどスポーツ走行向きになる。それはすなわち耐熱性が高く、高温まで耐えられるモデルということになる。
ブレーキは摩擦することで熱が発生する。ローターとパッドは高温になり、街乗りでは200度くらいまで上昇する。峠道を下ったりすると300度くらいまで上昇することもある。それがサーキット走行となるとコースによって500度や600度にもなるし、国内サーキットではブレーキ負荷が最高と言われるモビリティリゾートもてぎでは800度を超えることもあるという。
そういったスポーツ走行に対応するためのパッドが高価なモデルとしてラインアップされている。「どうせ買うならちょっと高いものにしよう」と選ぶと、必要以上にスポーティなパッドを選んでしまう事になりかねないのだ。
ブレーキパッドは様々な繊維や金属を樹脂で固めてできている。耐熱性を高めようとすると金属成分が多くなり、特に鉄が増えていく。
パッドメーカーによって名称は変わるが、基本的に街乗り向けはノンアスと呼ばれるものでノンアスベストの略。昔は繊維としてアスベストが使われていたが、現在はそれに変わる繊維が使われていてオーガニックなどと呼ぶこともある。そういった素材をベースに鉄分をやや入れたものをロースチールと呼んでいる。メーカーによってセミメタリックなどと呼ぶこともある。
このあたりは明確なルールがあるわけではなく、あるメーカーでは「ノンアス」「ロースチール」「セミメタリック」「フルメタル」の順で金属成分が増えるが、異なるメーカーでは「ノンアス」と「カーボンメタリック」と呼んでいたりもする。
◆適正対応温度を参考にして
このときに先のメーカーの「ロースチール」とあとのメーカーの「カーボンメタリック」のどちらが鉄分が多くて、サーキット走行向きな温度域を持っているかはわからない。それぞれのメーカーの適正対応温度を参考にしてもらいたい。なので、パッドを選ぶ時に材質だけでは選べない。メーカーによってその定義が異なる。大切なのは適正対応温度をよく把握して選ぶこと。
基本的に街乗りメインなら低温側の温度設定が0度や常温となっているものから選ぶこと。50度以上や100度以上が適正範囲のパッドがあるが、街乗りでは意外とその温度にはならない。鳴きや異常に減ってしまったりもするので、街乗りメインなら選ばないほうが無難。
高温側の対応温度はサーキットを走るのであれば600度以上が目安。ミニサーキットなら対応温度の低いもので大丈夫と思いがちだがコースレイアウトによるので、コースの大きさはあまり関係がない。
鈴鹿サーキットやオートポリスはノーマル+αくらいのパッドでも持ってしまうが、ミニサーキットである本庄サーキットなどは600度以上の温度に対応できるパッドでないと厳しい。
このように意外と適正温度はシビアなので、自分の使い方に合わせて選ぶようにしてもらいたい。どうせなら数千円高い方のパッドにしようかなと思いがちだが、それが高温に対応しているパッドの場合は逆に普段使いはしにくいことがある。大は小を兼ねないのがブレーキパッドの選び方なのだ。