ゆっくり移動すると街が楽しくなる、自動走行モビリティが実証実験中 | CAR CARE PLUS

ゆっくり移動すると街が楽しくなる、自動走行モビリティが実証実験中

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大人が複数人乗れるモビリティとなっているのが特徴。最高速度は時速5キロだが、今回の実証実験では最大でも時速4キロ。商品を見るエリアでは時速0.7キロまで落として走行しているとのことだった。
大人が複数人乗れるモビリティとなっているのが特徴。最高速度は時速5キロだが、今回の実証実験では最大でも時速4キロ。商品を見るエリアでは時速0.7キロまで落として走行しているとのことだった。 全 32 枚 拡大写真

低速で歩道を自動走行する小型モビリティ。走行中に停車しないで人が乗ったり降りたりできるほどの低速だ。

JR東日本(東日本旅客鉄道)は、「高輪ゲートウェイシティ」(仮称、東京都港区)のまちづくりでのモビリティサービスの提供に向けて、ゲキダンイイノの協力のもと、自動走行モビリティおよび移動体験を通した、街の回遊性向上についての実証実験を実施する。

実施場所はウォーターズ竹芝「プラザ」(東京都港区)を利用し、走行を通じて自動走行モビリティの歩行者との共存性が検証される。また、アトレや一竹芝タウンデザインと連携し、移動体験中にアトレ竹芝の店舗情報や水辺空間の魅力を乗客に発信することで、施設内の回遊性向上に繋げることができるかも検証される。実証実験については、2023年3月11日、12日に行われる予定。

10日にはプレス向けの体験会も行われた。最初にこれまでの取り組みや、今回の実証実験について、東日本旅客鉄道マーケティング本部の天内義也氏から解説があった。

◆移動+街を楽しむモビリティにしていきたい

高輪ゲートウェイシティは、最先端のテクノロジーを詰め込んだ、これからの都市開発のロードモデルになると考えられている。これまでにもロボットや、新しいモビリティを街に実装していくための実証実験を数多く行ってきた。

2020年3月に高輪ゲートウェイ駅が開業してから、駅中のマルシェで遠隔操作による販売案内を行うといった、非接触をテーマにした実証実験を進めたり、地域交通の課題を解決するための実証実験を行ったりと、積極的に取り組んでいる。ドローンを使った実証実験も行っており、都内で初めて有人地域におけるデリバリーも行われた。

高輪ゲートウェイシティの敷地はもともと鉄道の車両基地だったので、形状が非常に細長くできている。4街区、3街区、2街区、1街区と大きく分けて4つの街区があり、2025年の3月以降、最終的には品川駅の方までつながることになる。2階レベルのデッキで街全体がつながっていくというスケールコンセプトになっているので、この細長い敷地を生かした雰囲気づくりが進められている。

車や自転車などと交錯しないゾーンの中で、歩行者とモビリティがいかに共存できるか、共存していくために必要なモビリティの要件はなにかも検討していく。またモビリティで移動するだけではなく、乗りながら街を楽しむといった、乗車体験を豊かにできるかといったこともクリアすべき課題としている。さらに歩いている途中に、少し疲れたなと思ったとき、ふっと近づいて来てくれて、気軽に乗れるようなモビリティの形も模索している。人の乗車、降車の場所をスポットとして形成していくことで、エリア全体としての魅力を体感してもらうことがミッションとなっているのだ。

未来像としては、都市OSと言われるさまざまな街の中のデータをまとめて利活用するということが検討され、得られたデータをモビリティが空間に戻すことで、例えば混雑エリアがあれば、そこを自動的に避けてモビリティが移動したりなど、データと連携した運用が考えられている。

今回の実証実験は、3つのポイントがある。ひとつ目は、歩行者が主役のスペースにおいて、自動走行のモビリティが歩行者との安全に共存できるかということ。ふたつ目が街の中の回遊性の向上。高輪ゲートシティにはさまざまな文化創造施設やコンテンツがあるが、コンテンツ同士をいかにストレスなく回遊していけるか。次の街へ向かう際にも、街の情報を得られたりといった、体験価値の向上につながるようなモビリティ体験を検証する。3つ目はモビリティを動かす際に、どのように運行の費用をまかなっていくかを考える。今回は乗車無料だが、降車したあとになにか商品購入に繋げるといった、次の消費を促すような仕掛けが成立するのかも検証する。

◆道交法改正を見据えて開発したモビリティ

続けて、ゲキダンイイノの嶋田悠介座長から、検証モビリティである『iino type-S712』の説明があった。このモビリティは最高速度が5km/hに設定されている。なぜ5km/hに着目しているかについては、ゴミを回収する清掃員が、動いているごみ収集車の後部に飛び乗っている姿を見て、そんな事ができるモビリティが町中を走っていたら、身体ひとつでどこまででも行けるんじゃないかという発想からきていると語った。

世の中のトレンドとして歩行者専用のエリアというのはますます増えてきている。そんな中600mという距離に注目した。この600mは、徒歩で約10分の距離になる。これは人が別の交通手段を探し出す距離とのこと。高輪ゲートウェイシティの南北に長く続く通路で、歩行者の回遊性を高めながら楽しんでもらえるようなモビリティを検討してきた。

今回のモビリティであるiino type-S712というネーミングは、700mm×1200mmという車椅子の最大寸法の大きさがモチーフとなっている。今まで歩道空間は車椅子しか走れなかったが、4月の道交法改正で、立ち乗りのモビリティだったり、デリバリーロボットだったりが走れるようになる。乗車の人数も制限が無くなるいっぽう、速度が6km/h以下であることと、電動車いすの大きさ以内という条件がある。iino type-S712は、道交法改正を見据えて開発したものだ。

◆複数人が乗車できることはかなり重要なポイント

嶋田氏がとくにこだわっているポイントは、複数人乗りだ。ひとり乗りのモビリティはいろいろあるが、実証実験の際に、「友人や家族と一緒に遊びに来ているのに、ひとり用のモビリティしかないと、乗る際に躊躇する」という話をよく聞いたとのこと。やはり歩くときに一緒に会話ができるとか、情報を共有できるというのが重要だと語っていた。

ほかにも街で利用するモビリティということで、複数人で利用できること。視線の高さが歩行者と変わらないこと。最後に木製デザインで、街の中に溶け込むということも大事だと力説していた。

◆モビリティによって賑わいを創り出す

また情報の発信については、目的の施設だけ行ってそのまま帰ってしまうといった方も多いので、移動しながらいろいろな情報を与えることで、そこのエリア全体を楽しんでもらいたいという。

モビリティが求められている一番の目的は、地点と地点を結ぶということだが、その中で途中下車したくなるようなポイントだったり、情報をどう与えながらこの街全体を楽しんでもらえるかを考えることも大事なのだ。寄り道したり、滞留時間を増やしてもらうことで、モビリティが点と点を結ぶだけでなく、面へと昇華してにぎわいを創り出す。情報によってそんな価値を提供できるのではないかと考えていると述べた。

◆バンコクでもサービスを開始したい

イベント終了後に嶋田氏にモビリティについてお話を聞いた。自動運転の仕組みについては、あらかじめコースの3D地図を作りそれをモビリティのコンピューターに登録し、どういった経路をどのような速度で走り、ステアリングをどのようにきるのかなどを設定しているとのこと。そのため、走る場所の3D地図のデータがあれば、どこでも利用可能だ。

今後の展開については、グローバルの部分も視野に入れており、タイのバンコクに新しく建設されたパンスー中央駅では、輸送だけでなく人が集まるような仕掛けを探すデザインコンペがあり、そこで今回のモビリティをプレゼンしたところ最優秀賞を取ったそうだ。実証実験を経てサービスに繋げていきたいが、バンスー中央駅も周辺の駅を含めて段階的に開発が進むため、息の長い開発となりそうで、いつ頃からサービスが開始出来るといった正確な日程はまだ決められないようだ。

《関口敬文》

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