車高を下げたいとか、もっとスポーティな走りにしたい、もっと乗り心地をよくしたい、などさまざまな要望に応えられるのがサスペンション交換。その代名詞的なものが車高調と言われるサスペンションキットの装着だ。
ひとことに車高調と言っても実はさまざまな種類がある。その中からどうやって選べば良いのだろうか。
1:全長調整式車高調
まず、車高調はその名の通り車高が調整できるサスペンションキットのこと。とくにメジャーなのは全長調整式と呼ばれるモデルで、車高を無段階で調整できる。
これはダンパー部分にロアブラケットがねじこまれているからで、このネジ部分を回せば車高をわずかに上げたり下げたりができる。
フレキシブルに調整できるので、車高を1mm上げる下げるなどもできる。現在日本で市販されている車高調ではもっとも一般的な構造でもある。
2:ねじ式車高調
他にも全長は固定式のサスペンションキットもある。こちらはネジ式車高調とも呼ばれるもので車高を大きく下げるとジャッキアップした時にバネが上下に動いて遊んでしまう。この状態は違法なのでこれで公道走行は不可。車高を大きく下げるときはヘルパースプリングを組み合わせるなどが必要となる。
それでもシンプルな構造で緩むリスクがある箇所が少なくなる。セッティングがほぼ決まっている車種なら数mmの車高調整しかしない。などの理由であえてねじ式車高調をチョイスする場合もある。
3:Cリング式車高調
最近は減ったが、ねじ式サスペンションと同じ構造でスプリングを押さえる位置がフレキシブルではなく、3段階くらいから選べるのがCリング式。Cリングの位置を変えることでスプリングを支える位置が変わり、車高が変わる仕組み。車高調というよりは純正形状サスペンションに使われる構造。
仕組み的にはざっくりと3種類に分かれる。諸外国では全長調整式が禁止されている国もあるが、日本国内では問題ないので基本的に全長調整式をチョイスするのが王道。そして、各メーカーからリリースされている車高調もそのほとんどが全長調整式だ。
そして、全長調整式車高調には見た目には同じだが内部構造では大きく分けて2種類ある。
1:単筒式
ダンパー内部がひとつの筒でそこにオイルと隔壁がありその先に高圧ガスが充填される。オイルの中を穴の空いたピストンが往復することで減衰力を発生させるのがザックリとした構造。
多くのスポーツモデルで採用されている構造で、放熱性が高いので連続走行してもオイルの温度が上がりにくく減衰力を維持しやすい。大きなピストンバルブを使えるので減衰力を素早く立ち上げやすいなどの特徴がある。デメリットはフリクションロスが大きくなりやすい。オイルとガスが直列構造になるので、ストローク量が短くなりやすい。
2:複筒式
ダンパーの筒の中にもうひとつ筒が入っていて、その中をピストンバルブが動く構造。外側の筒との間にガスが入っている。構造的にガスによる圧力を小さくしやすく乗り心地が良くなりやすい。フリクションロスも少ないので全体的にしなやかに仕上げやすい。
デメリットはオイル容量が小さくなりやすい、ピストンバルブが小さくなるなどがある。また、構造的に車体へ取り付ける角度に制限がある。
純正サスペンションやリーズナブルな入門車高調に使われる構造だが、1台分で100万円を超えるようなハイエンドモデルや本格的なレース用の数百万円するサスペンションでは複筒式が一般的でもある。
たとえば、日本のサスペンション専門メーカーであるテインでは単筒式と複筒式の両方をリリースしている。リーズナブルでありながら街乗りでも快適なモデルには複筒式が使われる。本格的なサーキット走行などにも対応できるスポーツサスペンションには単筒式が使われているのだ。
それぞれのメリットとデメリットを把握した上で、自身の使い方に合わせて構造からチョイスするというのも選び方のひとつだ。
減衰力調整機構も気になるところ。何段階調整と表記がされているが、この段数が多い=セッティング幅が広いわけではない。段数が多いものは細かく調整できるというだけで、正直40段を超えるくらいになると1つ動かしても変化量はほとんどわからなくなる。そうなると10段階調整程度でも全く問題ないわけで、多段数=偉いというわけではないことを覚えておきたい。
減衰力調整は基本的に伸び側がメインに変化して、縮みこむときの減衰力は少し変化するレベルというのが、一般的な車高調の基本的な特性。
もし予算が許すなら、伸び側と縮み側の減衰力を独立して調整できる2wayと呼ばれるモデルすると、より細かく減衰力を合わせ込むことができるだろう。